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【THE REAL】本田圭佑がACミランで乗り越えるべき最大の逆風…日本代表でも生き残っていくために

4人の監督から厚い信頼を寄せられ、2010年代の日本代表を力強くけん引してきた本田圭佑が、サッカー人生で最大といっていいほどの逆風にさらされている。

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本田圭佑 参考画像(2016年9月11日)
  • 本田圭佑 参考画像(2016年9月11日)
  • 本田圭佑 参考画像(2016年8月10日)
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4人の監督から厚い信頼を寄せられ、2010年代の日本代表を力強くけん引してきた本田圭佑が、サッカー人生で最大といっていいほどの逆風にさらされている。

所属するセリエAのACミランで、ベンチにこそ入るものの、先発としてピッチに立てない。9月11日のウディネーゼとの第3節は、本田が置かれた厳しい現状を図らずも証明する一戦となった。

■3試合続けてベンチスタート

ウディネーゼ戦では、8月27日のナポリとの第2節で退場処分を受けたスロバキア代表MFユライ・クツカ、元U‐21フランス代表FWエムベイェ・ニアンの2選手が出場停止となっていた。

加えて、夏の移籍市場の最終日にフィオレンティーナから期限付き移籍で加入した、チリ代表MFマティアス・フェルナンデスが、9月6日のボリビア代表とのワールドカップ南米予選で負傷退場を強いられてしまう。

本田圭佑 (c) Getty Images
攻撃系の選手を3人も欠いてしまう緊急事態で、しかし、中盤とサイドの両方でプレーできる本田に声はかからなかった。これで開幕から3試合続けてベンチスタート。第1節のトリノ戦、そしてナポリ戦ではピッチに立つことなく試合終了のホイッスルを聞いている。

「その質問は何回も受けているので、今度はどのような答えにしようかなと思っているんですけど」

UAE(アラブ首長国連邦)代表と対戦した、ワールドカップ・アジア最終予選のために帰国していた8月下旬。ミランにおける現状を聞かれた本田は苦笑いともにこう前置きをしながら、独特の表現で厳しいことを認めている。

「確かに序列のスタート地点も、いままでよりも何が状況的に変わったかというと、契約が満了に向かっている選手という扱いになってきている気がする。やっぱり(序列が)低いので、もう少しアプローチのやり方を変えないと、簡単には試合に出られないのかなという気がしますけどね」

本田圭佑 (c) Getty Images
ミランと本田の契約は来年6月末で切れる。チームにとって必要不可欠な選手であれば、契約延長へ向けた交渉が始まってもおかしくはない時期。しかし、そうではない非情な現実が「契約が満了に向かっている選手という扱い」なる、本田の言葉に凝縮されている。

今シーズンから指揮を執るヴィンチェンツォ・モンテッラ監督は、基本フォーメーションを「4‐3‐3」にすえている。本田が出場機会を得るとすれば前線の「3」の右か、逆三角形で組む中盤でキャプテンのリッカルド・モントリーヴォの前に位置するインサイドハーフのどちらかとなる。

しかし、昨シーズンわずか1ゴールに終わっていた本田に対する新指揮官の評価は、残念ながら芳しいものではないのだろう。前者のポジションでは元U‐21スペイン代表で、ジェノアでの武者修行を終えて復帰したスソに大きく水を開けられた2番手。後者に至っては“圏外”のまま開幕を迎えていた。

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イタリアの報道によれば、今夏にはリーガ・エスパニョーラのセルタ、プレミアリーグのサンダーランドなどが本田の獲得へ向けて接触してきたが、本格的な交渉には至らなかったという。

ミラン残留を望んだ本田の意向に加えて、ミランが本田の違約金を1000万ユーロ(約11億5000万円)以上に設定していることも、他のクラブが二の足を踏む一因になったとイタリアのメディアは伝えている。

■“飼い殺し”になりかねない

背番号「10」を託された本田のユニフォームは、クラブ内でナンバーワンの売り上げを誇っている。マーケティング面における貢献度は大きいだけに、本田を手放すとしても相応の見返りはほしい。

本田圭佑 (c) Getty Images
クラブ側の営業的な思惑も絡んだなかで、迎えたミランでの4シーズン目。実質的な“飼い殺し”になりかねない状況に危機感を覚えたのか。どのようにアプローチする方法を変えるのか、と問われた本田はこんな言葉を残してもいる。

「基本的にはイタリア語でコミュニケーションを取らないので。取らないというのはイタリア語で取れないので、僕のほうから寄っていくことはあまりないんですけど…たとえばちょっとだけしゃべれるモントリーヴォとかを使って、コミュニケーションを取るようなことをするとか。まだそう思うところまでいっていないし、多分しないかもしれないんですけど、そういうこともちょっと考えようかなと」

モントリーヴォを介してコミュニケーションを取ろうと思った相手は、間違いなくモンテッラ監督だろう。直後に「しないかもしれない」と続けるあたりに、本田が胸中に抱く強烈なプライドが見え隠れする。

もっとも、所属クラブで試合に出られない状況が、選手のパフォーマンスに与える悪影響は計り知れないほど大きい。よく指摘される試合勘の欠如はもちろん、試合におけるスタミナも失われていく。いくらレベルの高い環境で日々の練習に励んでも、試合で必要とされるスタミナはまた別物だからだ。

■日本代表で7試合連続ゴール

UAE代表とのアジア最終予選初戦へ。「4‐2‐3‐1」の「3」の右での先発が予想された本田は、ミランで試合に出ていない事実に対する不安を、不敵な笑みを浮かべながら一蹴している。

「それも何回か質問を受けているんですけど、問題なしとしなければ試合には出るべきではないし、心身ともに準備はできているつもりではいるので。前線で出る以上はもちろん結果を求められるので、得点に絡む働きをしたいとは思っていますけど」

UAE代表戦では言葉通りに、前半11分にMF清武弘嗣(セビージャ)が蹴った直接フリーキックに、ファーサイドに陣取っていた本田が豪快なヘディングを一閃。2次予選から通算して7試合連続となるゴールをマークした。

しかし、結果を残したいという思いが強すぎたのか。時間の経過とともに右サイドを離れ、中央でプレーするケースが増えてくる。必然的にハリルジャパンの前線には“渋滞”が引き起こされ、追加点を奪えない。

本田圭佑 (c) Getty Images
UAE代表にまさかの逆転を許し、最悪となる黒星スタートを強いられた直後の取材エリア。本田は「まったく想定していなかった結果」と無念の表情を浮かべたが、舞台を敵地バンコクに移した6日のタイ代表との第2戦でも。勝利への喜びと同時に不完全燃焼の思いをも募らせている。

その象徴的なシーンが、日本の1点リードで迎えた前半24分となる。左サイドで粘り、相手を振り切ったFW浅野拓磨(シュツットガルト)が、絶妙のクロスをゴール前に折り返す。

ファーサイドにフリーの状態で詰めながら、利き足の左足を合わせようとしていたのは本田。誰もが抱いたゴールへの予感は、次の瞬間、まさかの空振りとともに弾け飛んでしまった。

ボールが不規則な弾み方をした跡もない。本田自身も首を傾げるしかなかったが、試合勘の衰えが一因だったと考えれば合点がいく。動きにも切れ味を欠いていった本田は無得点のまま、後半40分にFW小林悠(川崎フロンターレ)に代わってベンチへ下がっている。

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■日本代表に指定席はない

バヒド・ハリルホジッチ監督は、長く日本代表のゴールマウスを守ってきた川島永嗣を今回のアジア最終予選で招集していない。理由は単純明快。今シーズンから移った新天地のFCメス(フランス)でゴールキーパーの3番手に甘んじ、出場機会を得ていないからだ。

ゴールキーパーに西川周作(浦和レッズ)、東口順昭(ガンバ大阪)、林彰洋(サガン鳥栖)の3人を招集したハリルホジッチ監督は、川島に対して「先発での出場がなければ、この3人のなかにも入ることができない」とメディアを介して厳しい方針を伝えている。

そして、同じことが本田にも当てはまる。ミランで出場機会を得られなければ、日本代表のなかで指定席を用意するわけにはいかない。アンタッチャブルともいうべき例外を設けてしまえば、チーム内には不健全な雰囲気が漂い始める。

振り返ってみれば、ワールドカップ南アフリカ大会を直前に控えた日本代表で、当時所属していたCSKAモスクワにおける出色のプレーが岡田武史監督を魅了。不振に陥っていた中村俊輔(横浜F・マリノス)に代わる、チームの大黒柱の座を射止めた。

本田圭佑 (c) Getty Images
あれから6年あまり。勝負の世界における弱肉強食の掟は、誰よりも本田自身が理解している。タイ代表戦で先制ゴールをあげたFW原口元気は、所属するヘルタ・ベルリンでも絶好調をキープ。サイドアタッカーとしては、マリノスの齋藤学が得意のドリブルで対戦相手を翻弄し続けている。

今年の6月で30歳になった。選手である以上は、いつかは力をつけてきた後輩にバトンを託すときが訪れる。それでも世代交代の波に可能な限り抗ってみせると自らに言い聞かせながら、最後のワールドカップと位置づけているロシア大会を目指す思いを、本田はこんな言葉を通してUAE戦後に発信している。

「毎年100人くらいが海外へ行って、所属クラブでレギュラーとしてプレーする選手も50人いて、そこから誰を代表に選ぶのか。このような状況が、たとえば南米なんですよね。僕の経験上、ブラジル人選手がいないチームはないので。でもいま現在の日本代表は、僕を含めて海外である程度レギュラー争いをしている選手であれば、よほどのことがない限りは日本代表に選ばれて、レギュラーとして試合にも出られる。それだけじゃあ足りない、ということですよね。海外で活躍することがむしろ当たり前になって、日本代表のレギュラー争いも激しくなるくらいに、ヨーロッパの選手もやっていかないといけない」

■生き残りをかけて

もっと、もっと大勢の若手や中堅がJリーグから海外へ挑めという檄。そのなかで必ずレギュラーを獲ってみせるという自信と、自分自身を含めて、いま現在のヨーロッパ組の立ち位置はまだまだ甘いという戒め。さまざまな思いが伝わってくるが、本田を取り巻く状況は厳しい。

ウディネーゼ戦では両チームともに無得点で迎えた後半34分から、今シーズン初めてピッチに立った。配置された右サイドからゴール前への飛び出しやクロスなどで必死にゴールを目指したが、同43分に喫した失点を取り返せずに連敗を喫した。

現地時間16日には敵地でサンプドリア戦が待つが、出場停止の選手が戻ってくれば、再び本田の出番は遠のくだろう。フィオレンティーナ時代にモンテッラ監督から重用されたまな弟子・フェルナンデスのケガが癒えれば、攻撃陣のなかにおける序列はさらに低くなってしまう。

何よりも営業的な思惑が優先され、ベンチには入り続けるとすれば、本田個人の力ではなす術がない状況が生まれる。このままの流れながら、今シーズン限りでの退団は決定的。来年1月に幕を開ける冬の移籍市場をもにらみながら、ハリルジャパンへの生き残りもかけた本田の孤独な戦いは続く。

《藤江直人》
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