【プジョー 508 ディーゼル 試乗】ほんの少し競争力を身に着けた508…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【プジョー 508 ディーゼル 試乗】ほんの少し競争力を身に着けた508…中村孝仁

プジョー『508』はDセグメントのモデルである。このセグメントといえば、メルセデス『Cクラス』、BMW『3シリーズ』、アウディ『A4』など、強敵が目白押しの市場である。

自動車 試乗記
プジョー 508 GT ブルーHDi
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プジョー『508』はDセグメントのモデルである。このセグメントといえば、メルセデス『Cクラス』、BMW『3シリーズ』、アウディ『A4』など、強敵が目白押しの市場である。

さらに言えばボルボ『S60』やVW『パサート』など、この市場で508に競合するモデルは強敵、難敵がごまんといるわけで、それぞれが切磋琢磨して著しく進化を遂げている。

508が最後に進化を遂げたのは今から1年ほど前のこと。とはいってもエクステリアの化粧直しと若干のパワーアップだけで、正直な話、この1年でVW、アウディはフルチェンジ。BMWとボルボは最新鋭のクリーンディーゼルを投入。しかもほぼすべてのモデルが自動運転の先駆けとなる運転支援システムを装備したクルマに生まれ変わっている。その中にあって508は未だにそうした電子デバイスが用意されていない。さらに308では用意されたACCが、未だに通常のクルーズコントロールであるなど、装備レベルで話をすれば明確な大差をつけられているというのが現状なのである。

誕生したのは2011年だからそれほど古いわけではないのだが、誕生した時期が悪かった。当時プジョーは企業経営がどん底で行き詰っていた時代。新しいものへの投資や新車開発に回す資金が潤沢ではなかったことは事実である。それは残念なことだがクルマに反映されてしまう。だから完成した508に対して好印象を持ったメディアは少なかったように思う。今でもその遅れている点は解消されていない。

今回新たにクリーンディーゼルを投入したことで、その遅れを一歩取り戻した。日本における現行モデルは現在在庫しているガソリン車を売り切った後は、このディーゼル一本に絞られるそうだ。

その新しいディーゼル、2リットル直4で最高出力180ps、最大トルク400Nmを絞り出す。他メーカーのディーゼルが、押しなべてテーブルトップ状の最大トルクを帯で発揮する特性を持つのに対し、このエンジンは2000rpmのピンポイントで発揮する。圧縮比も16.7と比較的高めだから、スペックだけを見た時はその性能に対して懐疑的だったことは否めない。しかし、見ると乗るでは大違いというか、机上のスペックはあくまでも机上にしか過ぎないことを、このエンジンは教えてくれた。クリーンテクノロジーも進化している。そもそもすすを取り除くパティキュレートフィルター、DPFを世界で初めて採用したのは他でもないプジョーである。もっともそれは日本のイビデンが開発したものだったが…。

少なくとも最大トルクを発揮するまで走りがだるいかというとそんなことは全くない。1000rpmを少し超えればトルクは200Nmを超え、1500rpmも回れば性能曲線状は350Nmを絞り出している。そしてテーブルトップではないが、ほぼ最大トルクを2500rpm付近まで発揮してくれるから、常用域は常に極めて高いトルクで武装されていることになり、しかもレスポンスに優れているから、およそ緩慢という言葉とは無縁であった。

一方で運動性能は、初期の508で見せた古いドイツ車並のゴツゴツとした足の印象がすっかり影を潜め、スムーズで気持ちの良い乗り心地を提供している。また『406』時代に感銘を受けた非常に忠実なステアフィールも戻ってきている。だから、自動車としての原点である走る、曲がる、止まるという3要素は高い次元でまとまっているのだ。

ただ、今やそれだけの要素でクルマが語れる世の中ではない。とりわけ、安全装備やインフォテイメントシステム、そして自動運転に繋がるデバイスなど、未来を見据えた装備が必要不可欠になってきている。そうした点で508は1世代古いと言わざるを得ない。ディーゼルを纏い、競争力を一歩前進させたから、次の一手が見てみたいものである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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