【インタビュー】ホンダ初の女性役員「販売店で女性が活躍する世界を合理的に」…鈴木麻子執行役員 | Push on! Mycar-life

【インタビュー】ホンダ初の女性役員「販売店で女性が活躍する世界を合理的に」…鈴木麻子執行役員

ホンダは4月の役員人事で中国の合弁会社トップを務めていた鈴木麻子氏を執行役員に昇格させ、日本本部営業企画部長に起用した。外部からの監査役を除き、生え抜きでは初の女性役員の誕生だ。

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ホンダ 鈴木麻子執行役員
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  • 本田技研工業 本社(東京青山)

ホンダは4月の役員人事で中国の合弁会社トップを務めていた鈴木麻子氏を執行役員に昇格させ、日本本部営業企画部長に起用した。外部からの監査役を除き、生え抜きでは初の女性役員の誕生だ。

成熟市場の日本でこれまでのキャリアをどう生かすのか――報道各社の共同インタビューでは、販売店で「女性が活躍できる世界」を合理的に導入したいと語った。

----:消費税率の引き上げが再延期されたことで2016年度の市場やホンダの販売計画への影響をどう見ていますか。

鈴木:全体市場の数字は、(消費税増税の延期により)会社として485万台と見込んでいる。当社の四輪販売計画は、5月の決算発表時にも申し上げた68万5000台(前年度比3%減)を目指してやっていく。

消費税の変わり目(=増税)が今年度末から変更されたことで、3月の決算期で忙しい時期に税制が変わるという混乱が避けられた。(19年10月には)もう少し正常なビジネスのなかで、消費税の変更を迎えられるのかなと思っている。また、いま一部のメーカーさんが軽自動車の販売を止められていることの全体市場への影響も、さほど大きく出るとは、今のところは思っていない。そうした状況も踏まえ、われわれとしては68万5000台をやり切りたい。

----:海外のキャリアが長いですが、海外と国内市場との違いはどのように見ていますか。

鈴木:商品でいうと、やはり日本の市場は特殊というか、非常に進んでいるという一面がある。私の海外での仕事はアジアと中国だけだが、いわゆる当社のグローバルモデルを中心にやってきた。(これらの地域では)アメリカやヨーロッパで受け入れられるグローバルモデルが受け入れられる。より(サイズの)大きいモデルが尊ばれ、市場も拡大するというなかでやってきた。

日本に帰ると、やはり(軽自動車や5ナンバーなど)小さい規格のなかでいかに室内を広くするかとか、サイズは大きくないが、いかにコンフォタブル(快適)で高級感が出せるかといったところにフォーカスが向けられているのが大きな違いだ。また、海外では若い市場、成長市場を経験してきたのでメーカーと販売網の契約がドライで、かつ契約に基づいたメーカー主導での展開ができた。一方で日本では、ホンダの販売店は自転車のお店から二輪になっていただき、四輪になっていただいたと歴史が長い。自ずとメーカーと販売店の関係にも違ったものがある。

----:そうした海外での経験を国内市場での仕事にどう生かしていきますか。

鈴木:私の今までの経験が生かせるとすると、やはり販売店での女性の活躍を含めた合理的で、あるべき世界を、日本ではまだまだ習慣的にないものであっても、私の経験を基に合理的に導入していくことかなと考えている。いま、日本で求められている合理的な働き方だとか、少子高齢化への対応になるものだとか(部内や関係先と)いろいろ議論を始めているところだ。

----:ホンダの国内営業のなかで、鈴木さんの女性としての視点に期待されているところも大きい。どのように取り組みますか。

鈴木:いまも申したように、販売店での働き方ではまだまだ変えて行きたい、あるいは改善できるのではないかということがある。少しずつ変わりつつあるようだが、現状では例えば営業職は男性といったように、男女の役割分担がはっきりしている。もともとの社員教育のあり方とか、役割のもたせ方とかを見直して、営業職は男性中心のところを女性にもできるようにする。販売のプレッシャーも高いという現場の事情もあるので、一朝一夕には変えられないが、それによって男性も働きやすくなる環境をつくったりすることもできると思う。

中国では女性の店長さんがたくさん居たり、トップセールスも女性だったりというケースを実際に見てきた。そうした経験から、一人でも多くの女性にチャンスを与えて活躍していただき、そうした先輩を見て新しく入ってきた女性も向上心をもって働いていただけたらいいなと考えている。

商品開発については、女性のお客様が多い機種については、かなりのレベルで女性の視点を取り入れようということで、社内でも動いている。あえて私の女性としての視点を加えるのは、それほど必要ではないのかなと思っている。ただ、開発メンバーは男性が多いので、装備・仕様については、多くのお客様が使いこなせていないようなものがあればどんなところか、あるいは本当に必要な装備はどういうものなのかを振り返るようなことは、私の方から問いかけていきたい。

----:最近、親戚の女性が軽自動車を買い替えたのですが、自動ブレーキなど新しい技術に余りにも知識がないので驚きました。女性ユーザーには女性の営業担当の方が親身になってアプローチするということも重要だと思いました。

鈴木:私も技術の知識は余り人のことは言えないのですが(笑)。確かに店頭で本当にお客様のためになるような装備については、お客様の立場になってご紹介できるようにしなければならない。それにはやはり女性の販売員はこれから非常に重要だと思う。メカニカルな知識も必要だが、やはり装備の実利がどこにあるのかというご説明。例えば車庫入れがこれだけ楽になるという具体的な使い勝手に即したご説明ができれば、共感をもっていただけることになる。男性とは違う視点で、女性ならではのご紹介ができるようにしたいと思う。

◆鈴木 麻子(すずき・あさこ)
1987年ホンダ入社。タイ、マレーシア、ベトナム駐在での営業を経て2007年アジア・大洋州本部地域事業企画室長、10年事業管理本部財務部長。12年から中国に駐在し14年4月から16年3月まで東風本田汽車の総経理を務めた。同年4月執行役員。1964年生まれの52歳。

《池原照雄》

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