【NEE2016】筑波大附属小のICT活用公開授業、“反応率100%”が続出の100分 | Push on! Mycar-life

【NEE2016】筑波大附属小のICT活用公開授業、“反応率100%”が続出の100分

 「NEE2016」(New Education Expo 2016)東京会場最終日の6月4日、会場の東京ファッションタウンビルにおいて、筑波大附属小学校による公開授業が行われた。国語と算数を1コマずつ、同じ4年生の1クラスに対し行ったが、それぞれに特徴のある授業となった。

教育 教育
生徒のタブレットへの集中度も高い(国語・青山先生)
  • 生徒のタブレットへの集中度も高い(国語・青山先生)
  • 振返りで「千手観音」と形容されたように、生徒のタブレットへの書込みをすべてを把握できる(国語・青山先生)
  • 生徒同士が相談するなど、ペアワークやグループワークもひんぱんに盛り込まれる(国語・青山先生)
  • 生徒の書き込みをピックアップし比較(国語・青山先生)
  • 生徒の書込みを、ほかの生徒が内容を予想し解説(国語・青山先生)
  • 「マイ黒板」を利用し、自分の考えを整理したり書き加えたりできる(国語・青山先生)
  • 生徒の間を歩きながら授業(算数・夏坂先生)
  • アニメーションにより生徒の注意を惹き付ける(算数・夏坂先生)

 「NEE2016」(New Education Expo 2016)東京会場最終日の6月4日、会場の東京ファッションタウンビル(TFTビル)において、筑波大附属小学校による公開授業が行われた。国語と算数を1コマずつ、同じ4年生の1クラスに対し行ったが、それぞれに特徴のある授業となった。

 教室となるセミナー会場には、タッチ操作が可能な大画面ディスプレイと実況用マルチスクリーンを設置。さらに、児童1人に1台ずつタブレット端末が割り当てられる。タブレットのOSは、Windows 8ベースで、キーボードの切り離しが可能な2in1 PCタイプだ。内田洋行の学習支援システム「ActiveSchool(アクティブスクール)」により、教材や児童の管理を可能としている。

 授業は、トータル1時間50分で、間に10分ほどの休憩をはさみ国語1コマ・算数1コマ。40名の男女児童が、各テーブル2、3名ずつ着席し、タブレットを見ながらの授業となった。担当するのは、国語が筑波大学附属小学校の青山由紀先生、算数が同じく筑波大学附属小学校の夏坂哲志先生だ。

国語「説明的文章を読んで、作者が一番言いたいことを、本文から選ぶ」

 青山先生の授業は、タブレットを使ったデジタル教科書の音読からスタート。あわせて、授業へのウォーミングアップとして、フラッシュ式に表示される漢字の音読みを行った。クイズ方式で、児童を徐々に授業に引き込んでいくためのノウハウが見られる。

 そして、授業本編が開始。スポーツ選手の高野進氏が書いたコラム(光村図書4上に収録)を読み、「作者が一番言いたいこと」を読み取るという内容だ。

 児童たちは、デジタル教科書の文章を読み、そこから「作者が一番言いたいこと」と思われる文章を、デジタルペンのタッチ操作でマーキング。それを「マイ黒板」と呼ばれる画面に登録していく。マイ黒板には、さまざまな書込みを行うことも可能だ。マーキングした個所を複数、マイ黒板に登録し、それぞれを線で結んで、その関係を説明したり、色分けしたりといった使い方ができる。このようにマイ黒板は、児童にとってのメモであり、視覚的に思考を整理できるツールとなっている。

 さらに同時に、先生側は一括してマイ黒板を見通せる。全児童の内容を把握するだけでなく、ピックアップして大画面ディスプレイに表示したり、複数並べて比較表示したりすることもできる。このようにして、児童の思考を把握できるようになっている。

 こうして出揃った意見をもとに、発表を実施。先生が特定児童のマイ黒板をピックアップし、その内容をざっと説明するとともに、他児童にもその内容を説明させるという形で、「作者が一番言いたいこと」について検討を進める。合間合間では、テーブルごとのグループ(2人だけのテーブルならペア)で相談も行わせ、さまざまな意見を検討していった。

 その際に「タブレットの○○を操作して」といった表現ではなく、「教科書を読んで」「ノートを出して」などと青山先生が指示しており、授業の流れ自体はもちろん、リテラシーなどの非常に細かな部分まで考慮し、授業を構築していることが伺えた。

 例文となったコラムでは、冒頭と末尾の段落に同じ文章が登場。そのため、この構造を「サンドイッチ型」と表現し、これこそが作者の一番言いたいことでは、という意見が大きな支持を集めた。ただ、その細部の単語、あるいは、サンドイッチの“中身”にあたる、中段の文章については、次の授業への持ち越しとなった。この先は、ビデオ動画を(あえて音声なしで)再生し、その音声を想像させ、中段の説明に繋げるとのこと。時間が足りず今回の授業ではそこまでは展開できなかったが、非常に興味深い展開だ。

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■算数「図形が増えていく法則を考え、数式で表す」

 続いて、夏坂先生の授業。こちらの授業では、最初はテーブルにタブレットはない。児童は全員タブレットをしまっており、紙のノートのみを用意している状態からスタートした。7本の棒を使って作った、正三角形が3つ繋がった形「△▽△」を見せ、どういう形かを児童に説明させる。

 このとき、ただ出来上がった図を見せるのでなく、赤いカーテンが開くようなアニメーションを見せ、そこから図形を順に作っていくという流れで、児童の興味を惹き付けるとともに、その思考の方向性を導いていた。最初から出来上がった全体像「△▽△」を見せるのでなく、「△」→「△▽」→「△▽△」と変化するアニメーションで、これはが徐々に増えていくことを想像させる。

 児童は「3つの三角形」「7本の棒」「台形」「ひし形と三角形」などの意見を出すが、台形、ひし形などはまだ習っていないので、ここでは、「3つの三角形」「7本の棒」ということをベースに話を発展させていく。これが「△▽△▽」になったら、どういう図形になるかを説明させる。そしてさらに「△▽△▽△」の段階になって、パソコンが登場し、自分の思う数字、さらにはその法則を、パソコン内の教材に児童が書き込む。ここで、「割り算」に繋げようというのが、この授業の目論見だ。

 各児童の思考はさまざまに分かれ、単純に数字が増えていくその法則を考える児童から、図形を区分けする児童、三角形ごとにカラーを変えて塗り分け説明しようとする児童まで登場し、それぞれが主張を繰り広げる。先生がピックアップした児童のPCが切断されてしまい、説明が止まるハプニングもあったが、逆にそれを想像させるなど、状況に応じた対応もあった。

 終盤には「棒が21本あったとき、三角形はいくつになるか」という質問が提示された。答えは10だが、どうしてそうなるかの説明・数式での表現は複数考えられ、大人でも意見が分かれるところだろう。夏坂先生が選んだ数式は、記者は最初ピンとこなかったが、その数式を提示した児童がキチンと説明することで、なるほどと思えるものだった。実際、その過程を踏んで納得している児童も多かった。

両授業を通じて

 途中のハプニングもあったせいか、夏坂先生の授業は少し時間切れ。このとき、児童が不満のブーイングを行った。進んで授業を受け、その続きを知りたい、という気持ちが自然に高まっている証だが、ここまで児童の興味を惹き集中させるのは、通常授業では難しい。もちろん、夏坂先生の授業展開の妙もあるが、児童が“解決への手応え”を感じているからこそだろう。

 またこれは青山先生の授業でも共通していたが、とにかく子どもたちがしっかりと手を挙げ、意見を表明しようとする。その割合が非常に高く、ほぼ全員が手を挙げている状態も少なくなかった。公開授業ということで、児童も無意識に張り切っている部分もあるかもしれないが、反応率が高くなるのも、やはりICTを利用した授業の特長だ。教育ICT活用によるアクティブラーニングが実現し、筑波大学附属小学校の児童が、大きく恩恵を受けているのは間違いなさそうだ。

 東京会場に続き、NEE2016は6月17日と18日に大阪マーチャンダイズ・マート(OMM)でも開催。6月17日は、午前10時から11時50分まで大阪教育大学附属池田小学校による算数の公開授業を実施する。公開授業後には授業研究会が実施され、放送大学教育支援センター教授の中川一史氏と神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授の岡部恭幸氏が授業の振返りを行う。公開授業のほか、基調講演や特別セミナーの詳細や事前申込みはNEE2016のWebサイトで確認できる。

《冨岡晶》
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