【NEE2016】総入替えより一部替え、低予算で導入できるちょい足しICT | Push on! Mycar-life

【NEE2016】総入替えより一部替え、低予算で導入できるちょい足しICT

 6月2日から東京・有明のファッションタウンビル(TFT)で開催されている教育関係者向けの展示会「New Education Expo 2016(NEE2016)」では、市販されているICT機器を教室に持ち込む際のちょっとしたコツや、低予算で導入できるICT製品が展示されている。

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子どもが覗けない、高い場所のようすも楽々観察できる カシオ計算機が展示するセパレート式コンパクトデジカメ「EX-FR100」
  • 子どもが覗けない、高い場所のようすも楽々観察できる カシオ計算機が展示するセパレート式コンパクトデジカメ「EX-FR100」
  • カシオ計算機が展示するセパレート式コンパクトデジカメ「EX-FR100」
  • 学校専売モデル「EX-SC100」なら書画カメラモードも搭載されている カシオ計算機ブースのようす
  • エルモ社が展示する「みエルモん」(78,000円、税別) 書画カメラの使い方は、先生が一番よく知っている
  • 理想科学工業の「ORPHIS(オルフィス) FW」なら、カラーでないと理解が難しい国旗のカラー画像も低コストで実現できる
  • 白黒プリントならドットやストライプで表しがちな表、グラフも、カラーなら一目でわかりやすい 理想科学工業「ORPHIS(オルフィス) FW」のプリント実例
  • NeoLABの「Neo smartpen N2」 実際の書き心地は?「良い意味で、ただのボールペンです。違和感がなくて、子どもたちも使いやすそう」(現場の声)
  • スマートペンを利用するには、オリジナルのワークシートを印刷して利用するだけ NeoLAB「Neo smartpen N2」展示ブース

 「ICT教育」と聞くと、教室の至るところにハイテク機器が導入されており、授業開始から授業終了まで、子どもたちが常にタブレットやPCを利用しているイメージを持つことはないだろうか。教育現場ではまだまだICT導入校が少なく、「大仰に構えてしまう」といった声もあがっている。

 デジタル活用に不安の残る教員でも、低予算で、かつ、簡単に操作ができるICT機器はないのだろうか。6月2日から4日まで東京・有明のファッションタウンビル(TFT)で開催されている教育関係者向けの展示会「New Education Expo 2016(NEE2016)」では、市販されているICT機器を教室に持ち込む際のちょっとしたコツや、低予算で導入できるICT製品が展示されている。

市販のアクションカメラが教育現場で活躍

 カシオ計算機は、「ICT機器・アクセサリ」ゾーンでカメラ部とディスプレイ部が分離するセパレート式コンパクトデジカメ「EX-FR100」を展示している。もともとはアウトドアでのレジャーやスポーツシーンにおける利用を考えて発売されたモデルだが、カメラとディスプレイが分離する特性を生かせば、子どもたちの手が届かないような高所の撮影、観察も容易になる。会場では、セルカ棒(いわゆる自撮り棒)の先にカメラ部をつけ、展示パネル上部に取り付けられている花かごを撮影。手元のディスプレイには、床上からでは見えない花かごの中がくっきりと移るようすを実演していた。すでにデジタルカメラやセルカ棒を持っている教諭なら、屋外での学習時にすぐに真似できそうな利用方法だ。

 無理に高価なICT製品を購入せずとも、まずは手持ちのスマートフォンやデジタルカメラが授業で利用できるかを考え、実践してみるのもICT教育の立派な入り口に違いない。さらに実現したい授業図が描けたら、文教向けのICT機器購入を検討してもよいだろう。そういった教員に向け、カシオ計算機は授業でよく使うシーンを考慮した学校専売モデルのデジタルカメラ「EX-SC100」も用意している。「書画カメラモード」も搭載しているため、カメラを中心にした授業図が思いつく場合は利用の幅が広がりそうだ。

使い慣れた教具なら利用も楽々、昨今のモデルにチェンジ

 電子黒板やタブレットを活用した授業を行ううえで、一番の不安事は「まず自分自身が使いこなせるか」ということだろう。何度も繰り返される講習会や分厚い説明書を理解しなければ利用できない製品からは、おのずと興味も遠のいてしまう。では、普段使い慣れた教具に、少しだけデジタル要素が追加されたものならばどうか。

 エルモ社は、教員には馴染み深い書画カメラ(実物投影機)をデジタル時代に合わせて進化させたインタラクティブ書画カメラ「みエルモん」(78,000円、税別)の導入を提案している。従来の書画カメラの使い勝手や鮮明な画質はそのままに、PC・タブレット時代に合わせてHDMI端子を追加。ユニット型電子黒板の「つたエルモん」(89,000円、税別)やワイヤレス・ペンタブレット「かけるもん」(28,400円、税別)などと掛け合わせれば、いつもの授業スタイルにデジタル要素を取り入れることができる。将来的に電子黒板や教室のICT化が進んだとしても、長期にわたり使い続けられそうな製品だ。最新製品では、さらに上位機モデルとしてWi-Fiを搭載した次世代書画カメラ「TX-1」の展示も見られた。

 展示ブースでは、書画カメラとユニット型電子黒板を掛け合わせ、どの学校にもひとつはあるであろう地球儀を利用した地理の授業シーンを実演。将来的には電子黒板を購入したいが、まずは得意な書画カメラのデジタル化から進めてみよう、という小さなステップの繰り返しがICT活用への近道になるのかもしれない。

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オリジナル教材に自信があるなら、デジタルペンをちょい足し

 NEEの出展ブースの担当者が皆、口を揃えて発言するのは、「現場を知り尽くし、経験を積んだ先生方のほうがICT活用アイデアが豊富」であるということ。各々が作成する教材にはたくさんの知見が詰まっているため、アナログ的だからといって打ち捨てたくない。NEEの「教材デジタルコンテンツ・学習支援ソフト」ブースでは、従来のオリジナル教材を活用しつつ、今後のデジタル化の波を取り入れた製品の存在も目立つ。

 NeoLABは、今までどおり「紙に書く」という方法を維持しながらICT授業を実現するスマートペン(デジタルペン)「Neo smartpen N2」を展示中。スマートペンに対応するプリントソフトウェア「N Docu Direct」で普通紙にオリジナル教材を印刷するだけで、ワークシートがスマートペンに対応したデジタル教材に早変わりする。肝心のデジタルペンは、子どもが握りやすい三角形で、ボールペン同様にすらすらとした書き心地を実現。すでに教室にタブレットや電子黒板が整っている、または導入が決定されていて、自身の知見が凝縮された教材も生かしたいとする指導者の悩みを解決できそうだ。

老朽化した設備の入替えも立派な「ICT化」のひとつ

 「ICT導入には困難がつきまとう」と尻込みしながらも、教育関係者は皆、どういった教材なら導入でき、活用できるのか、デジタル時代を生きる子どもたちの将来を思い、真剣に逡巡しているようすだった。

 身近なデジタルカメラやビデオカメラ、モバイルディスプレイを活用した授業も「ICT授業」に含まれるし、老朽化した数世代前のプリンターを文教用に特化した最新の機器に入れ替えることも「ICT化」の範疇に含まれるだろう。現に、理想科学工業は学校・教育委員会向けの高性能プリンター「ORPHIS(オルフィス) FW」を開発し、ICT機器を利用したプリント業務印刷の効率化を提案している。

 「ORPHIS(オルフィス) FW」は教育現場向けに開発されたプリンターであるため、従来のプリンターでは難しかった短時間でのカラー印刷を実現し、作業時間の短縮や子どもと向き合う時間の増加、残業の抑制を促す。さらに、白黒プリントでは子どもたちが理解しにくいと言われるグラフや表、国旗などのカラー画像も、低コストでフルカラー印刷できるため、一目でわかりやすいプリントを作成できる。最新のICT機器を導入するメリットには、子どもたちへの教育効果を高めるだけではなく、教育関係者にとっての利益も含まれていることがわかる。

 数々の展示を前にすれば、きっとどの製品が自校に合うのか迷うこともあるだろう。そんなときは、まずは無理なく利用できるICTの導入から始めてみる。それが、ICT化の第一歩になるのかもしれない。

《佐藤亜希》
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