【VW ゴルフGTI クラブスポーツ 試乗】立ち位置はちょうどGTIとRの間、だが躾けの良さは“最高”…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【VW ゴルフGTI クラブスポーツ 試乗】立ち位置はちょうどGTIとRの間、だが躾けの良さは“最高”…中村孝仁

久しぶりにキーシリンダーにキーを差し込んでエンジンをかけた。最先端技術の鎧で身を固めているはずのVW『ゴルフ』だが、最新の『GTI クラブスポーツ』はそんなプリミティブな一面ものぞかせる。

自動車 試乗記
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久しぶりにキーシリンダーにキーを差し込んでエンジンをかけた。最先端技術の鎧で身を固めているはずのVW『ゴルフ』だが、最新の『GTI クラブスポーツ』はそんなプリミティブな一面ものぞかせる。

クラブスポーツの名は「ポルシェ」の専売特許化と思っていたら、最近は「アウディ」も、そしてこのVWも使うようになってきた。ただ、少し様相が違うのは、ポルシェのクラブスポーツバーションは、こてこてのレース仕様が多いのに対し、今回登場したVWゴルフGTIのクラブスポーツバーションは、それがトラックエディションと名付けられていても、かなりソフトな路線を行っていることだ。

勿論パフォーマンスに関してはノーマルGTIよりも約20%ほどアップした265psを発生。しかもブーストモードを持っていて10秒間だけなら290psを発生するハイパワーの持ち主だ。このエンジン型式CJXだけを見れば、『ゴルフR』のそれと同じ。つまりチューンを変えたものである。ただし、ゴルフRと決定的に異なるのは、あちらはフルタイム4WDの4モーションであるのに対し、こちらはあくまでGTIの発展形だから、FWDであることだ。

この種のハイパフォーマンスハッチバックに乗っていつも想像することは、どのくらい過激なのか?ということ。ラテン系がこの種のクルマを作るとそりゃあもう過激。といっても日常を犠牲にするものでは決してないのだが、VWにはすでにこのGTIよりさらに過激なゴルフRが存在する。だから、このクラブスポーツの立ち位置は一体どのようなものか?という疑問が少なからずあった。結論から行けば、ゴルフRから4WD機能を取り去ったものがクラブスポーツであるわけで、重たくフリクションが少なからずある4WDが必要ないというユーザーには、このクラブスポーツが良いだろう。

エクステリアもそれなりに化粧直ししていて、フロントのチンスポイラーのデザインが異なることや、テールゲートに付けられたルーフスポイラーの形状もオリジナル。それにホイールもデザインが異なるなど、一目でそれと分かる。また、ボディサイドには“CLUBSPORT”のステッカーも貼られているから主張としては十分だ。

それにしても冒頭に話しをしたキーシリンダーに限らず、ウィンカーも軽く出しただけで3回ウィンクしてくれないなど、何故かこのクルマはプリミティブに作られている。シートはシェル型のレカロ製スポーツシート。アルカンターラの変形ステアリングは、直進状態を示す赤い帯が縫い込まれたもので、雰囲気は十分である。

広報車が置かれていた地下駐車場から、地上に上る間、その締め上げられたサスペンションが小刻みに揺れ、こいつは相当に過激そうだな…と感じたものの、それは極低速でのことだけ。いざ、一般道に乗り出してみると、乗り心地は締まり感こそあれ、不快な突き上げ感などは皆無で、十分に快適であった。DCCのモードはノーマル。これをコンフォートにしてやるとさらに快適になって、普通のゴルフと何ら変わらないと言っても過言ではなく、躾けは極めてよい。因みにゴルフRのようなレースモードはこのクルマにはない。

とはいえ、ユーザーの多くがこのクルマに求めるものは、非日常の過激さ。そこで、スポーツモードに入れて高速進入路からフル加速を味わうことにした。ゴルフRと違って、もっと軽い走りを体感できるかと思いきや、実はそうでもなくて極めて速いという印象はゴルフR並で、それ以上でも以下でもなかった。

非現実の世界をオンロードで味わおうとしても、法定速度内でそれが可能なのは2速まで。3速に入った瞬間に100km/hを超えてしまうから、本当の楽しさを体感するにはサーキットに持ち込むしか手はない。また、このクルマはフロントに電子制御油圧式ディファレンシャルロックを装備し、アンダーステアを抑えて、より高い駆動力が得られることになっているのだが、一般道ではそれを体感するほどのスピードは出せず、こちらもやはりサーキットに持ち込むしか、その機能を実感する術はない。

アイドリング中にDCCを操作してスポーツをチョイスすると、アイドリングが300rpmほど高まる。それにすべてのレスポンスが一段俊敏になり、足もより引き締まった状態となる。もっとも、一段低いギアで常に引っ張ることになって、街中で常用するモードではない。それとこの子、マニュアルモードでシフトアップすると、結構下品にブッとオナラをする。この音、もう少し何とかならないものだろうか。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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