子どもを見守る安心と喜び、園と保護者を繋ぐ連絡帳アプリ「mimory」の効果とは | Push on! Mycar-life

子どもを見守る安心と喜び、園と保護者を繋ぐ連絡帳アプリ「mimory」の効果とは

 保育現場と家庭を繋ぐアプリ「mimory(みもりー)」を導入した経緯や効果、そして保護者からの反応を、つるみAsa保育園の佐藤千景園長に聞いた。

教育 教育
PR
園が実際に保護者に送った写真の例
  • 園が実際に保護者に送った写真の例
  • 園が実際に保護者に送った写真の例 お散歩のようすも、スマホで写真を撮るのと変わらない操作性でパシャリ、そして送信
  • にこやかにインタビューに答えるつるみAsa保育園の佐藤千景園長 (撮影:市原達也)
  • mimory 園の先生の操作画面例
  • mimory 園から緊急連絡を行う場合の画面例
  • mimory ひとめでわかるよう工夫された出欠確認画面
  • mimory

 子どもの成長は早い。我が子とできるだけ多くの時間を一緒に過ごし、一番近くでその姿を見守りたいとする気持ちは保護者なら誰でも同じだろう。仕事も育児も両立する保護者なら、保育園や幼稚園で日中を過ごす子どものようすも気になるはずだ。

 「今、何をして過ごしているかな」「お友達と仲良くできているかな」―そんな、託児中の保護者の不安を解消するため、鶴見Asa保育園ではWeb連絡帳アプリを導入している。保育現場と家庭を繋ぐアプリ「mimory(みもりー)」を導入した経緯や効果、そして保護者からの反応を、鶴見Asa保育園の佐藤千景園長に聞いた。

10行の文章より1枚の写真

 子どもを見守るスマートフォンアプリ「mimory」は、音楽や教育プラットフォームの提供を行う株式会社フェイス(以下:フェイス)と特定非営利活動法人(NPO法人)東京学芸大こども未来研究所(以下:こども未来研究所)、コンテンツ作成やプロデュースを行う株式会社HORBAL(以下:HORBAL)の3者が協力し制作したWeb連絡帳アプリ。「連絡帳機能」や「タイムライン機能」を備え、保育園や幼稚園の先生は「mimory」を通じて園で過ごす子どものようすを母親・父親に文章や写真で届けることができる。

 利用方法は簡単で、園や保護者は「mimory」を自身のスマートフォンやタブレットにインストールするだけ。園は「連絡帳機能」で行事の出欠連絡や特別なお知らせなどを保護者に向けて一斉告知できるほか、「タイムライン機能」を利用して園で過ごす子どものようすを保護者に送信できる。保護者は、子どものようすを受信するほか、子どもが急な発熱などで登園できなくなった場合に、「mimory」から簡単な操作で欠席の連絡ができることも「mimory」の特長のひとつ。

 「保護者に信頼されるあたたかな支援」や「子どもひとりひとりの最善の利益の保証」を保育理念に掲げる神奈川県横浜市鶴見区の「鶴見Asa(アーサ)保育園」では、2015年11月上旬からこの「mimory」を試験導入している。

 「10行の文章より、1枚の写真のほうがお子さんのようすが伝わりやすいこともある」。鶴見Asa保育園の佐藤園長はそう語る。これまで保育園で過ごす子どものようすを保護者に伝える手段は手書きの連絡帳が主流だったが、長い子どもでは10時間程度を過ごすことにもなる園での生活は数行だけでは伝えきれるものではない。保護者としても、仕事を終えて子どもを迎え、帰宅してからは家事や育児に追われ、子どもとゆっくり話す時間もなく、もっと我が子の日中のようすを知りたい、見守りたいとする気持ちを抱くことも多いのではないだろうか。「保護者あっての子ども、子どもがいての保育園。保護者との関わりをより大事にしていくため、導入を決めました。」(佐藤園長)

◆初めてのICT導入、デジタル慣れした保護者に抵抗感なし

 「お母さま方はもちろん、現場の保育士もスマートフォンやパソコンに慣れている20代、30代のIT世代であることから、導入することに特に不安や課題はありませんでした。導入前は保護者の方にアプリに関する説明書をお渡ししただけでしたが、導入してからも大きなトラブルや混乱は見受けられません。想定していたよりも、スムーズに皆さんにご利用いただけていますね。」(佐藤園長)

 こども未来研究所がモニター園25施設を対象に実施した「mimory利用園アンケート報告」によると、比較的多くの園で子どもが小さいころからデジタル機器に触れたり、利用する体験の必要性を感じていることがわかっている。こども未来研究所はこの反応に関して「現場は、積極的に活用をしていくというスタンスではなく、時代の流れとして必要になってくると感じている印象」と分析しており、Wi-Fi環境やデジタルデバイスを活用する環境を整えるには試行錯誤が必要だと指摘している。また、デジタル環境の整備に必要性を感じていながらも、多くの園で、実際に利用しているデジタル機器はPCやタブレットのみで、その利用範囲も事務処理や資料作成にとどまっているという。

 鶴見Asa保育園も、事務利用以外ではDVDプレイヤーやテレビ、iPadなどのデジタルデバイスを一切利用してこなかった。いわば、まったくICT機器を利用する土壌のない中での「mimory」導入だったが、保育士や保護者の反応は上々だったようす。佐藤園長によると、「mimory」の動作環境はおもにスマートフォンであるため、園での様子を見たいという気持ちからフィーチャーフォン(ガラケー)をスマートフォンに機種変更した保護者もいたそうだ。

 「連絡帳がアプリ化することに関し、親御さんに困ったようすはなかったように思います。中には、先生方の手間が増えるのではないか、と保育士のことを心配してくださった方もいたくらいです。やはり、導入に関し混乱や抵抗感がなかったのは、保護者の皆さんや園のスタッフが普段からデジタル機器に慣れている世代であることが大きいと思います。」(佐藤園長)

家では見られない子どもの一面が届く喜び

 導入に際し問題はなかったという「mimory」だが、その後の保護者からの反応はどうか。

 「自然体のお子さんの姿をお知らせしているため、保護者から『嬉しい』『会議中だったけど何度も見てしまいました』『安心しました』といった感想をいただくようになりました。

 保護者が知りたいのは、親のいない間の"本当の子どもの表情"です。保育参観も行っていますが、保護者がいる場ではあくまでも子どもたちは保護者といるときの顔をしているものです。だからこそ、現場では本当の保育中の子どもたちの姿を写真で届けるようにしていますし、その点が保護者にも喜んでいただけているのだと思います。

 私たち自身、家では見られない園での子どものようすをお届けできることで、園と保護者が一緒にお子さまを見守っている、という気持ちを持つようになりました。「mimory」を利用することで、保護者の皆さんとの絆が強くなったような気がします。」と佐藤園長は嬉しそうに話してくれた。

◆現場の作業負担も軽減…すきま時間にスマホで撮影

 普段は見ることのできない園でのようすを見られることは保護者にとって喜ばしいこと。しかし、子どもたちのようすを写真に収めたり、文章を打ったりと、現場で働く保育士やスタッフの作業負担は増えていないのだろうか。

 佐藤園長によれば、鶴見Asa保育園では、午前中に1人につき1枚、保護者に向けて写真を送っている。時間がない場合はクラス全体の写真を撮影したり、数人で遊んでいる子どもたちを一緒に撮影したりすることもある。「 スマートフォンから簡単な操作で連絡できますし、現場からも特に作業が増えて困っているといった声はありません。(佐藤園長)」本分である保育を最優先しつつ、スタッフ8名が柔軟に対応しているようすがうかがえた。

 実際に「mimory」で情報を送信している保育士に話を聞くと、操作は難しくなく、「スマホを使うのと特に変わりない」という。スマートフォンさえあれば、遊戯の最中や寝かしつけの合間、給食の時間に簡単に情報を送信できる手軽さが業務負担軽減に一役かっているようだ。

食事や遊びを家庭に応用、子どもの成長速度を共有

 夫婦で積極的な育児に取り組む中澤さん夫婦は、「mimory」に届く情報を家庭での子育てに生かしている。給食のようすで離乳食の進み具合や量がわかるため、園から届く写真やメッセージを食事の参考にしているそうだ。遊んでいるようすの写真は「家でもやってみよう」と思うきっかけになる。

 仕事の休憩中に子どものようすを見ることが楽しみと語るのは、角谷香菜さん。以前も連絡帳で日中のようすはうかがい知れたが、「mimory」ではリアルタイムで、しかも写真で表情やどんな遊びをしているか、何を食べているかを見られるため安心できるという。さらに、平日は一緒に過ごせなくて寂しかったが、「mimory」を利用することで「共に時間を過ごせているように感じられる」ようになり、今では連絡が届くのを心待ちにしているという。

 「mimory」利用園アンケート報告によれば、「mimory」を利用している保護者の80%以上が「mimory」の機能を評価し、満足していることがわかっている。回答した保護者によれば、「mimory」の導入で子どもの日々の成長を感じられるようになり、それをきっかけに子どもや夫婦間でのコミュニケーションが増えていったそうだ。

孫の顔を見せてあげたい…遠方にいる祖父母との共有機能に期待

 機能に慣れてきたことで、機能に対する保護者からの要望も増えてきた。現状、「mimory」は園と保護者が相互に利用できる掲示板や投稿へのコメント欄といったSNS機能は備えていないが、メッセージを送信する機能や動画に対する要望もでてきている。

 佐藤園長によれば、もっとも多いのは「遠くにいるおじいちゃん、おばあちゃんにも子どものようすを伝えたい」という要望。実際に、こども未来研究所が実施した調査でも、利用保護者の70%以上が「祖父母にも『mimory』の情報を共有したい」と考えていることがわかった。

 「お孫さんの姿はもちろん、甥っ子、姪っ子のようすを見たいという方もいらっしゃいます。現代は、ひとりの子どもの成長を家族や親戚、地域みんなで見守る社会だからこそ、お母さまやお父さまだけではなく、遠く離れた親戚とも共有できるような機能があると良いですね。

 保育園は子どもにとって"社会"。利用料はいくらかかっても良いから、ひとりひとりのスマートフォンで子どもの成長してゆく姿を見たいとする声は多いですよ。」(佐藤園長)

◆親子と園の連携で子どもの「自己肯定感」を高めさらなる成長へ

 「mimory」の開発に携わったこども未来研究所理事研究員の高橋真生氏によると、「mimory」は当初、家庭向けに「子どもの成長や自己肯定感をサポートするアプリ」として開発される予定だった。子どもの自己肯定感を伸ばす際に重要なのは、子どもが成功体験を重ね、頑張っていること、挑戦していることを保護者が認めてあげること。その目的から、子どもが取り組む遊びを記録し、保護者が子どものチャレンジを可視化しやすいアプリの開発がスタートし、「mimory」の原型が形作られた。

 しかし、多忙な生活の中でも子どもの成長を記録し、その頑張りをこまめに褒めてあげたいとする共働き世帯も多い。そうした世帯では、アプリの使い道は土日などの休日に限られてしまい、遊びや成長の記録機能を有効活用できない。そこで、子どもたちが昼間の時間の大半を費やす保育園や幼稚園との連携を考え始めた。

 同研究所研究員であり、自身もひとりの幼稚園教諭として埼玉県内の幼稚園にも務める村山大樹氏は「ICTと幼児教育が結びつく環境は(社会の流れとして)今後益々整っていく」と指摘。園側がアプリやデジタル機器を使いこなすための支援はもちろん、保育現場の先生が気軽に使うために必要な機能を備えたアプリやサービスを提供する開発者の必要性も説いた。

 開発に携わったフェイスとこども未来研究所、HORBALの3者は2015年9月から都内を中心にモニター施設を募り、現在は、鶴見Asa保育園を含め首都圏を中心に25施設で「mimory」の試験導入を行っている。「今後も継続して利用したい」と話すのは、佐藤園長。園長、保育士、母親としての利用体験や保護者からの好感触を受け、愛知県で保育園を運営する友人にも「mimory」の良さを伝えた。「mimory」は今後、試験導入を行っている園からの要望をもとに新機能の追加などを行う予定だ。

mimory 鶴見Asa(アーサ)保育園 園長インタビュー

《佐藤亜希》
page top