【ボルボ XC90 試乗】 新しさ炸裂!ボルボの未来が楽しみな1台…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【ボルボ XC90 試乗】 新しさ炸裂!ボルボの未来が楽しみな1台…中村孝仁

独立していた時代から、フォード傘下の時代を経て、今ボルボは中国ジーリー傘下となったが、見事なほど、彼らが思い描く理想を追求し始めている。

自動車 試乗記
ボルボ XC90 T6
  • ボルボ XC90 T6
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  • このノブを右に回すとエンジンスタート
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独立していた時代から、フォード傘下の時代を経て、今ボルボは中国ジーリー傘下となったが、見事なほど、彼らが思い描く理想を追求し始めている。

端的な例が今回初採用されたSPAと名付けられたプラットフォームである。スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャの略だが、今後ボルボの各モデルは大小にかかわらず、このプラットフォームを採用していく。このプラットフォーム、デザイン面からも譲れない1点があったそうだ、それはAピラー下端からフロントアクスル中心までの距離が固定されていること。それ以外のすべてのディメンションは自由だが、ここだけフィックスされている。これによって美しいデザインを可能にするのだという。

そのデザイン。フロントグリルはかつての名車、ボルボ『P1800』を想起させるオーバル型のデザイン。これも今後のボルボに踏襲されていくそうで、すでに本国ではデビューを済ませた『S90』や、ジュネーブショーでワールドプレミアされる『V90』などにも踏襲されている。余談ながらS90は秋口ぐらいまでには日本市場にお目見えすることになっているそうだ。

エンジンはすべてDrive-Eの名を持つ直4エンジン。そもそもこのエンジンしか搭載しないことを前提に開発されたプラットフォームがSPAなのだ。Drive-Eはすでに、既存ボルボすべてに搭載されて、日本市場でも好評を得ているエンジン。今回搭載されたのは2リットルにスーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合わせた、いわゆるツインチャージャーである。4気筒で2トンを超える車重は無理があるのでは? とは過去のお話し。まあ、全然OKである。これについては後述する。

最後はボルボのお家芸である安全性。今回は2つの世界初の機能を盛り込んだ安全装備が全車に標準装備された。特にランオフロードプロテクションという機能は、道路から逸脱し、車体が上下に揺さぶられても、きちっとシートベルトが乗員を保護するという機能。さすがにこれは試せない。

と、ここまで話しても新しいボルボ『XC90』がどれほど斬新なモデルであるか見当をつけていただけると思うのだが、実際に使ってみて凄かったのはここから。

実はどこのメーカーでもインハウスレギュレーションと言って、メーカーで統一した決まりごとがある。これまでのボルボだと、例えばライトスイッチはダッシュボード右端のロータリースイッチだったり、ワイパーレバーの強弱を上下方向で行ったり等々。しかし、今回そうしたインハウスレギュレーションがことごとく打ち破られ、全く新しいインストルメントパネルが構築されていた。

前述したメカニカルに動く機能にしても、ライトスイッチはコラムレバーで回転させるタイプに変わったし、ワイパー強弱は上下方向が逆になっている。そしてエアコン調節から、インフォテイメントシステムに至る操作はすべてダッシュセンターに付く縦型9インチのディスプレイで行う。また、ドライバー前のメータークラスターも12.3インチの液晶ディスプレイに取って代わられた。しかもその機能の多さ。いくら書いても書き尽くすことがないほど多岐にわたるので、一つだけ大きな特徴を記すと、アップルのCarPlayに対応し、iPhoneを所有していれば、それをそのままディスプレイに表示させて、siriを使ってコントロールすることが出来る。これ、実際に使うと極めて便利でナビからオーディオから、超が付くほどイージーな操作が可能になる。

そもそもエンジンの掛け方からして独特である。センターコンソールのエンジンと書かれたノブを右に回すと始動。左で停止である。唯一従来通りともいえるシフトレバーでDをセレクトしていざ出発。

静粛性は4気筒と言えども非常に静かで、V6やV8の必要性は感じない。他のDrive-Eでも体験しているが、回転は実にスムーズである。低速域から高速に至るトルク感も十分満足できるレベル。ただし、ハイパフォーマンスかと言われれば、そうではない。さすがに音までは変えられず4気筒特有の爆発音であるが、チープな印象は皆無である。

そのエンジンノブの後ろに付くのがドライブ切り替えモード。こちらも5つのモード切り替えを可能にしている。試乗車はオプションのエアサス仕様となっていたが、思うにこいつはまだ煮詰め切れていない印象が漂っていた。最大のネガは、路面を問わず、微振動を室内に伝えてしまう点。本来のサスペンションはフロントが新開発のダブルウィツシュボーン、リアはこちらもインテグラルアクスルと称する横置きのCFRP製リーフスプリングを使った独立懸架。まずはオリジナルの足を乗ってから、乗り心地については判断したいが、現状、エアサス付きの足は決して満足できる乗り心地ではなかった。

そして装着されるタイヤはこれもボルボでは未知の領域だった275/45R20という巨大な20インチタイヤ。装着されていたのはコンチネンタル・スポーツコンタクト5なのだが、何とSUVとレタリングされたSUV専用タイヤである。因みに間もなくやってくるPHEVは21インチが標準。そしてRデザインは22インチが標準で、一体タイヤサイズはどこまで大きくなるのか…という思いがする。

全速度対応のACCなど最早当たり前の機能だが、このクルマにはさらにパイロットアシスト機能という、50km/h以下で前車を追従し車線内に保持する自動運転の先駆けのような機能もついている。スピードがスピードだから、主として高速の渋滞で使いそうな機能である。

とまあ、まだ機能の半分も紹介しきれていないが、とにかくこの新しいボルボは次世代と呼ばれていた多くの機能が盛り込まれた新しさを感じるクルマである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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