【スズキ イグニス 試乗】Bセグメントに波乱を呼びそうな気配…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【スズキ イグニス 試乗】Bセグメントに波乱を呼びそうな気配…中村孝仁

特にスズキの信奉者ではないが、最近のスズキが投入するモデルはどれも気概に満ちていて、乗り甲斐があるクルマばかりだ。新しい『イグニス』 もその例外ではない。

自動車 試乗記
スズキ イグニス
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特にスズキの信奉者ではないが、最近のスズキが投入するモデルはどれも気概に満ちていて、乗り甲斐があるクルマばかりだ。新しい『イグニス』 もその例外ではない。

とにかく非常に志が高いと感じる。最たる部分が新しいプラットフォーム。このプラットフォームの形状は、基本的に『アルト』のそれと同じ。小型車用に作られたもので、『ソリオ』ですでに市場投入しているものだが、とにかく軽く作られている。

イグニスの最軽量モデルは850kg。例えばライバルと目されるVW『クロスup!』は950kg。イグニスの場合4WDの一番重いモデルだって920kgに収まっている。国産には想定するライバルがいないそうだから、直接比較はできないが、とにかく軽い。重くすれば乗り心地等に重厚感を出しやすいし、車高の高いクルマなら安定感を求めればどうしてもアンダーボディは重くしたいところだが、それをせずにしっかりとした安定感を醸し出しているところに高い志を感じる。

次に、充実した装備。デュアルカメラによるブレーキサポートは、さすがにセーフティーパッケージのオプションだが、エアコンは全車フルオートが標準だし、マイルドハイブリッドシステムも全車標準。アップル・カープレイに対応する先進性も、国産車としては素早い対応である。

K12Cの名を持つデュアルジェット4気筒も、とにかく軽量化と音・振動対策をしっかりととったもので、性能自体は決して飛び抜けたものではないが、高回転まで回してもフリクションを感じない中々優れたユニットである。

デザインも、個人的にはなかなかいいと思う。サイドビューを見ると、それがアルトに使われたモチーフを入れ込んだデザインであることがよくわかるが、それ以外にもかつてのスズキ各車からデザインモチーフを拝借して、スズキブランドのアイデンティティーを確立している。エクステリアだけでなくインテリアも同様で、一見極めてシンプルでそっけないようにも感じられるが、配色を工夫してイントネーションをつけ、機能的にとてもよく考えられたデザインにまとめられていると思った。

新色であるフレイムオレンジパールメタリックのボディカラーをチョイスしていざ試乗。試乗車はすべて最上位機種の「ハイブリッドMZ」というグレードだ。

エンジンは軽快なハミングと共にアクセルに反応してくれるが、それを伝達するトランスミッションはあまり褒められたものではないCVT。出足でも、そして高速のパーシャルからの加速感でも、ワンテンポ遅れる立ち上がりが少し気になった。因みに7速の疑似ステップを付けたパドルシフトも用意されている。このCVTの影響か、全体的なアクセルの踏み込みに対するパワーの立ち上がり感がもさっとしていて、巡行に入ってしまえば問題なのだが、瞬間的なパフォーマンスを求めたい場合は少し不満が残る。

一方で音の遮断と平坦な路面における乗り心地は中々の優れもの。車高を高くしたせいで、サスペンションのストロークが増えたかと思いきや、実は増えておらず、ややストローク不足を感じさせるが、少なくとも平坦路ではしっかりと追従し、不満はない。しかし、急激で大きな入力が入るとその性格は一変し、かなり暴力的な挙動を示す。とりわけコーナリング中に段差を超えるような場合、クルマは明確にリアが跳ねる挙動を示す。エンジニアによればソリオに対し、ホイールを大型化したことによってバネ下重量が増えているのが主たる原因だと説明してくれたが、この部分は正直改善して欲しいと思った。

しかし、ネガな要素は精々このくらい。コンパクトなクルマながら、パーキングに止めてみてもなかなかの存在感を示すし、最上位で最も装備が充実したモデルでもFWDならオプションのセーフティーパッケージを装着した状態で税込み173万8800円。 これに全方位モニター付きメモリーナビゲーションを装備しても190万円に届かない。機能的にはこれ以上盛る要素がないから、いわゆるフル装備でこの値段。僕が持っているBセグメントのデミオだと200万円に届いてしまうから、費用対効果だけを考えるとイグニスが有利である。

国産のみならず、VWクロスup!やフィアット『パンダ』あたりまで含めて、Bセグメントに波乱を呼びそうなモデルの誕生と言えよう。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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