激変する大学入試、今後求められる力とは…Z会メテウス開発マネージャー寺西隆行氏に聞く | Push on! Mycar-life

激変する大学入試、今後求められる力とは…Z会メテウス開発マネージャー寺西隆行氏に聞く

 センター試験の廃止や新テストの導入など、「高大接続システム改革」プランにより大学入試制度が2020年より大きく変わろうとしている。Z会エデュースでは大学入試改革に備え、主体的な学びを引き出す「東大進学教室 メテウス」を2016年3月より開校する。

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Z会エデュース 首都圏中高一貫事業課長 寺西隆行氏
  • Z会エデュース 首都圏中高一貫事業課長 寺西隆行氏
  • 今後導入される大学入試新テストの問題例
  • Z会エデュース 首都圏中高一貫事業課長 寺西隆行氏
  • 「Z会東大進学教室 メテウス」
  • 「Z会東大進学教室 メテウス」の解説
  • 「Z会東大進学教室 メテウス」のパンフレット

 センター試験の廃止や新テストの導入など、「高大接続システム改革」プランにより大学入試制度が2020年より大きく変わろうとしている。それらの変革に先駆けて、東大や京大では推薦入試が導入され、知識だけでは計れない、思考型の学力が大きく求められている。

 高大接続システム改革プランが大学入試におよぼす影響や今後求められている力について、また、新しい学びに適応するZ会の新教室「Z会東大進学教室 メテウス」についてメテウス開発プロジェクトマネージャーである寺西隆行氏に聞いた。

制度は変化、求める「主体的な学び」「生きる力」に変化なし

--高大接続システム改革により、大学入試は、いつ、何がどのように変わりますか。

 新しい大学入試の始まりは2020年末、年度にすると2021年度入試からを予定されています。新中学2年生から、制度や運用、大学入試に求められる力などすべてが変わる予定です。

 大学入試改革に込められた思いは“主体的な学び”。つまり、「主体的な学びを評価するための大学入試」が実施されます。実は、以前のゆとり教育の根幹をなした、子どもたちに生きる力を身につけさせたいという信念は(ゆとり教育の時と)変わっていません。残念ながらゆとり教育は知識軽視に受け取られたため、今回の学習指導要領の改訂において教科書で扱う内容を増やし、知識獲得も重視しているというメッセージを出したうえで、“主体的な学び”をより評価するための大学入試改革に臨んでいます。

 本来教育というものは、小学校教育から変え、その教育を受けた子どもの中学校教育を変え…と進めるのが理想です。ゆとり教育はこれを目指したと思われますが、なかなかうまくいかなかったため、今回は初等・中等教育を経た、高等教育の入口である大学入試を変えることで現在の教育を変えていこうとしているのだと思います。要するに、主体的な学びという理念を初等・中等教育で実践していく手段として、まず大学入試を変えるのが最善の策であるとされたわけです。

--「生きる力」とは具体的にどのような力でしょうか。

 これは私の個人的な教育観でもありますが、「学力=学ぶ力」であり、学ぶ力があれば生きる力もあると思います。2007年に改正された学校教育法の中で、学力は以下の3つの要素からなると定義されています。まず「知識・技能」。基礎学力といわれるものです。次に知識をベースにした「思考力・判断力・表現力」。そして、3つ目が「主体的に学習に取り組む態度」です。知識そのものも大切にしつつ、これらすべてを統合した力が「生きる力」につながる「学力」ではないでしょうか。

 ちなみに2006年、戦後の1947年以来初めて、教育基本法が改正されました。その改正では、教育の目標として「創造性」「社会形成の寄与」「国際社会の平和と発展に寄与」などの要素が新たに追加されています。最近にわかに重要視されていると思われている「グローバル化」ですが、すでに2006年に法で明確化されており、ここから大学入試改革の動きが始まったとも言えます。

いかに公正に評価するか? 主体的な学びの評価方法を巡る議論

--「主体的な学び」は、どのように評価することができるのでしょうか。

 主体的な学びを評価するための仕組み作りは、現実にはなかなか進んでいないでしょうね。従来の一問一答のように解答が決まっているような問題なら評価は簡単ですが、そうではありません。主観に偏っていると捉えられる判断ではなく、公正な評価の仕組みを作るのは、とても難しいと思います。

 ただ、評価する方法そのものは存在します。極論を言えば、大学の学長が受験者ひとりひとりをすべて面接し、主体的に学ぶ意欲を評価することはできますよね。入社面接などですでに行われている方法です。しかし、この方法を入試に導入するのは時間的にも、経費的にも、そして公正性の面でも、社会的には受け入れがたいですよね。よって、考えられる評価方法はいろいろ存在しますが、社会的に納得性の高い評価のシステム作りに時間がかかっているのが現状です。

 どんな問題でも、解答を評価し、点数をつけることはできます。ただ、それが主観に偏っていないか、公正であるかどうかが議論されているのです。小中学校時代は「積極性あり」といった観点別評価というものがあったにも関わらず、高校ではおもに知識を問うペーパーテストの点数で評価されることが多かったと思います。正解が必ずひとつある問題は点数化しやすく、点数での評価において世の中も納得しやすいものですよね。

 つまり、採点の仕組みは「世の中から納得が得られる評価基準」であることが求められており、知識を問う問題なら誰しも評価基準は納得します。しかしそれで、これからの未来を切り拓く若者を選抜できるのか、という問題が発生するため、大学入試改革では、困難ではあるものの、ひとつの正解がない問題に対し、評価する基準を模索しているのです。
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《相川いずみ》
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