【インタビュー】安田顕 現代の“怪優”の誕生のきっかけは「職場から逃げただけ」!? | Push on! Mycar-life

【インタビュー】安田顕 現代の“怪優”の誕生のきっかけは「職場から逃げただけ」!?

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『俳優 亀岡拓次』安田顕/photo:Naoki Kurozu
  • 『俳優 亀岡拓次』安田顕/photo:Naoki Kurozu
  • 『俳優 亀岡拓次』安田顕/photo:Naoki Kurozu
  • 『俳優 亀岡拓次』 - (C) 2016『俳優 亀岡拓次』製作委員会
  • 『俳優 亀岡拓次』安田顕/photo:Naoki Kurozu
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  • 『俳優 亀岡拓次』 - (C) 2016『俳優 亀岡拓次』製作委員会
  • 『俳優 亀岡拓次』安田顕/photo:Naoki Kurozu
  • 『俳優 亀岡拓次』 - (C) 2016『俳優 亀岡拓次』製作委員会
「つかみどころがない」、「カメレオン」。この男を評する上でそんな言葉が並ぶ。顔はイケメンなのに、ついつい顔よりも存在感や独特の立ち居振る舞いに目が行ってしまう。まさに現代の「怪優」安田顕! そんな彼が俳優、しかも脇役ばかりを演じ続ける男を演じた映画『俳優 亀岡拓次』がまもなく公開となる。これを機に俳優・安田顕の素顔を解き明かすべくインタビューを敢行したが、「のらりくらりとすいません(笑)!」という本人の言葉通り、なんとも不思議な展開に…。

安田さんが演じた亀岡は37歳独身。小さな役ばかりを粛々とこなし、現場を渡り歩く名脇役です。安田さん自身、亀岡という俳優をどのようにご覧になりましたか?

安田:うらやましいと思いますね。僕は彼になれないですから。

――「なれない」というのは…?

安田:彼は変化を求めてないんですね。「変わらない」ということに対する人様の安心感があり、だからこそ脇役として重宝されるんでしょうね。

――安田さんは自分に変化を求めている?

安田:やはり、変わらない人はいないし、自ずと変わっていくものだと思います。彼の場合、そこで変化が乏しいので貴重なんです。そういう意味で、僕は彼になれないので、素直に「うらやましい」という言葉が使えますね。

――亀岡に対し、理解や共感を覚える部分は?

安田:原作の小説(戌井昭人)の中にも、オムツをはいてバイクを飛ばして、好きな人のところに行き、オムツの中にオシッコをしてしまうという描写が出てきますが、ひとつひとつの行動は謎なんだけど、つなげて線にすると理解できるというか分かるんですよね。何となく、僕自身の内面と重なるところがあるというか…突飛で謎なんだけど、彼の行動に共感できるなって思いました。

――俳優が俳優を演じるということについて難しさややりづらさはなかったですか?

安田:そうですね、酔っ払いに酔っ払いの演技はできないと言いますが、やはり、客観性が重要になってきて、自分の日常をうまく引き出すという意味で……といま、いろいろ答えさせてもらいましたけど、要はそんなに特別な意識は持ってなかったと思います(笑)。無理に答えを出そうとしてましたけど…すいません(苦笑)。

――演じ終えて「俳優」という仕事について考えさせられるような部分も…?

安田:正直に言わせてもらうとなかったんですけど、それじゃ記事にならないですよね…? じゃあ…

――無理はされなくて大丈夫です(笑)! そういう、ある意味で軽妙というか、深く考えすぎないようなスタンスは普段から?

安田:考えてないわけじゃないでしょうけどね。だからって胸を張って「してます」って言うことでもないですよね。「○○的には…」じゃないですけど(笑)、「亀岡はこう言わないですよね?」みたいなアプローチってしたことないですね。そこは演出家さんが決めること。僕は将棋の駒だと思ってますから。「ここは“○○だっぺ?”でお願いします」と言われたら「○○だっぺ!」と言いますね。

――亀岡が酒を飲むシーンで、安田さん自身も実際に酒を飲んで臨んだそうですが、これは横浜聡子監督と相談の上だとか? でも「安田顕が実際に酒を飲んで撮影に臨んだ」とだけ聞くとファンは「そういうことやりそう!」「リアルに飲んで、哀愁あるシーンを作り上げたんだな」とか思ってしまいそうです。様々な役をやってきたからこそ、いろんなイメージを持たれるでしょうが、そういうパブリックイメージはどう受けとめてますか?

安田:そこは「そういうイメージ持ってくださるんだ」と思うだけで、楽しんでるわけでもないし、否定する必要もないし、ただそれだけですね。優しい役をやって「優しいですね」と言われたら「ありがとうございます。そうなんです、僕優しいところもあるんです」と思うし、「イヤな奴でしたね」と言われれば「そう、イヤなところあるんですよ」という感じ。どんな思いを持っていただいてもありがたいですし、「僕はこういう男なので変えてください」ということでもないですね。

――亀岡が恋に落ちる安曇を演じた麻生久美子さんにはどんな印象を持たれましたか?

安田:あくまで僕は、安曇さんとしてお話をさせていただいていましたが、品があって清楚なところに引き込まれましたね。正直、本当の麻生さんがどんな方かはまだ存じ上げないんですが、最近、CMで安曇とは全然違う麻生さんを見て「役者さんだなぁ」って思いました。

――ご自分についてのイメージだけでなく、安田さん自身、周囲に対して、そうやってイメージをお持ちなんですね(笑)。完成した映画を見ての感想も教えてください。

安田:正直、ビックリしましたね。もっとぶっ飛んでいて「すごい! 天才だと思いました。ぜひ見てください!」みたいなものになるのかな? と思いきや、キッチリと半歩手前を進んでるなぁと。完全に想定外でもないし、「ハイハイ、来たね」という想定内でもない。いい具合で半歩先にあるのを随所に感じて面白かったです」。

――劇中劇やいろんな個性的な映画監督たちの撮影が面白かったですが、安田さん自身、これまでああいう現場を経験したことは?

安田:ホントの「あるある」というのは、映画で描いたって面白くないと思います(笑)。手錠はアクロバティックに掛けた方がいいですしね。映画の中に出てくる「日没でもう撮影できないから飲みに行こう」というのも、よほどの大作じゃなきゃないでしょうし、私はそういうのに呼ばれたことはないですね。そういう意味で、この映画は、日本の映画現場の「あるある」をデフォルメしたファンタジーだと思います。

――俳優を演じられたこの機会に、安田さん自身、どういう経緯で俳優として生きることを決めたのかを教えてください。

安田:もともとは大学のサークルの模擬店で、隣りの騒がしくて楽しそうな店が演劇部だったんです。こんな暗い自分も明るくなれるものかと門を叩いたんですが、結局、暗いままですね。それからも「おれは絶対なる!」という強い思いを持ってやってきたわけではないですね。「海賊王におれは…」みたいに「(役者に)なるぞ!」と思ったことはないですね。

――とはいえ、大学卒業後、一度は就職されて、そこをやめて再び、演劇活動に戻られたんですよね? そうするには何かしら強い決断が…?

安田:「おれは役者になる」って思いで仕事辞めたわけではなく、「この仕事、向いてないかも…」って思って仕事から逃げたんですね(苦笑)。こればかりは断言できます! 私は、職場から逃げました。芝居を口実にしたんです…。

――意外と後ろ向きの理由で…

安田:当時の上司から年賀状が来まして「信頼は一度失うと決して戻ってはきません。あなたがこれからどういう道に進むか分かりませんが、人の信頼を裏切ることは今後しないでください。ご活躍をお祈りしております」という言葉をいただきました…。それから、いやでも意識は変わったと思います。ただ、正直、自分で「役者でございっ!」と思ってる役者なんて、あんまりいないと思うんです。特殊な職業? 本当にそうなのかな? と思ってます。

スタイリスト:九(yolken)
ヘアメイク:白石義人(ima.)
《photo / text:Naoki Kurozu》

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