IT教育で世界を変える…ライフイズテック代表取締役 水野雄介氏 | Push on! Mycar-life

IT教育で世界を変える…ライフイズテック代表取締役 水野雄介氏

 2010年に設立され、これまでに8,000人以上の中学生・高校生に対して「ITキャンプ」を行っているライフイズテック。代表取締役である水野雄介氏に、同社の設立からこれまでの歩み、教育について聞いた。

教育 教育
ライフイズテック代表の水野雄介氏
  • ライフイズテック代表の水野雄介氏
  • 水野雄介氏
  • 水野氏とメンター
  • 水野氏とメンター
  • スクールも行われるライフイズテック本社
  • 2025年までの目標として掲げる21世紀の教育改革

 2010年に設立され、これまでに8,000人以上の中学生・高校生に対して「ITキャンプ」を行っているライフイズテック。同社は、世界中でコンピューターサイエンスやICT教育の普及に貢献する組織に与えられる「Google RISE Awards 2014」を東アジアで初めて受賞した。代表取締役である水野雄介氏に、同社の設立からこれまでの歩み、教育について聞いた。

--ライフイズテックを立ち上げた経緯についてお聞かせください。

水野氏:もともと僕が教師をやっていたこともありますが、キッザニアが人気を集めており、新しい教育が求められていると感じたことがきっかけです。

--設立当時は「ピスチャー」という社名でしたよね。

水野氏:はい。当初、「ライフイズテック」というのは社名ではなく、IT教育プログラム名でした。名刺交換してご挨拶する際、「ピスチャーの、ライフイズテックの水野です」というのもわかりにくいと感じていました。また、GMOインターネットの熊谷正寿さん(現・代表取締役会長兼社長)に「社名変えたほうがいいよ」とアドバイスをいただき、ライフイズテックに変えました。

--熊谷さんをはじめ、著名な方々の賛同や協力を得て活動されているようですが、どのように人脈を広げられたのでしょうか。

水野氏:最初は、ほとんどゼロからです。気になっている方がTwitterでつぶやかれたときに、「5分でいいからお話を聞いていただけませんか」と返信したり、講演会に足を運んで、終わった直後に「ほんのちょっとでいいのでお話をさせてください」とお願いしたりしました。

--いきなり、ですか。すごい行動力ですね。

水野氏:IT教育ということもあって、結構話を聞いてくださいました。また、ご協力いただける方も多かったです。「教育」だったからだと思います。大学の先生が新聞で語っておられたことに共感し、すぐに連絡し、中高生向けのITキャンプの必要性を伝えたところ、ご賛同いただき、キャンパス内の施設を貸していただけた、ということもあります。

--ITキャンプについて、もう少しご説明いただけますか。

水野氏:ITキャンプは、中高生向けのプログラミング講座です。iPhone・Androidアプリ・ゲーム開発、プログラミング、デザインなどの最新IT技術を学ぶことによって、「創造する力」と「つくる技術」の習得を目指します。

--ITキャンプは当初から順調でしたか。

水野氏:2010年に会社を設立し、すぐにITキャンプの準備にとりかかりましたが、実際に開催するまでに約1年かかっています。実は僕を含め、共同設立者は3人ともプログラミングが専門ではないため、ITキャンプの内容を練りながら、実際に教える人を探しました。

--教育界の反応はいかがでしたか。

水野氏:当初、教育界の反応はいまひとつでした。パソコンやスマホなどに対し、良いイメージをお持ちでない方もいらしたからかもしれません。一方、IT企業などの反応は上々でした。中高生へのIT教育についてお伝えすると「それは素晴らしい」とご賛同いただき、いくつもの企業からの協力が得られました。

--プログラミング教育は、子どもたちにとってどんなメリットがあるとお考えですか。

水野氏:21世紀を生きる、これからの子どもたちにとって、英語とITは必要最低限のスキルになるのではないでしょうか。全員がプログラマーになる必要はありませんが、プログラミングができるといろいろな可能性が広がります。たとえば、政治や選挙に不満があったとして、ただ文句を言うのではなく、自らWebサイトをつくって、自分の考えを世に問うこともできます。これは一例ですが、プログラミングを学ぶことで、選択肢が広がります。

--ITキャンプには、どういうお子さんが参加されていますか。

水野氏:パソコンおたく、ゲームおたくみたいな子を想像されるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。短期集中型のITキャンプ以外に、毎週プログラミングを学ぶITスクールも開催していますが、いわゆる、普通の中高生がほとんどです。野球部、バレー部、バトミントン部、バトン部などの子が、他の習いごとや塾と同じような感覚で通ってきています。プログラミングを学び、iPhoneアプリやゲーム、新しいサービスをつくることは、今の子どもたちにとって「イケてる」ことのようです(笑)。

--プログラミングを指導するメンターは、どうやって選ばれているのでしょうか。

水野氏:おもに、プログラミング経験の豊富な大学生にお願いしていますが、プログラミングの技術や知識に加え、子どもに教えるスキル、コミュニケーション能力なども重視し、デザインについては美術系大学の学生さんの力もお借りしています。指導するメンターについても、「イケてる」ことが重要で、中高生が目標にできるような大学生を選んでいます。

--水野さんご自身はどのようなお子さんでしたか。

水野氏:いわゆる普通の子でしたが、どちらかというとリーダーシップはあるほうだったと思います。小学校2年生から高校3年生まで野球を続けていました。現役時代の原辰徳選手(現・読売ジャイアンツ監督)の大ファンでした。

--教育に興味を持たれたのは、いつ頃ですか。

水野氏:教育にはもともと興味があり、大学時代に塾の講師や家庭教師のアルバイトをしていました。また、大学院生のときから、開成高校や早稲田高校で物理の非常勤講師を務めました。教えるのが好きでしたね。何かのきっかけで、子どもが急に伸びるようすを見るのが好きなのです。

--起業については、学生時代から志していたのでしょうか。

水野氏:いいえ、まったく。27歳まで、自分が起業するとは思ってもみませんでした。教育を変えたくて会社を立ち上げ、ITキャンプをスタートさせ、多くの中高生に参加していただくことになるとは、自分でも驚きです。

--最後に、今後の抱負についてお聞かせください。

水野氏:2025年までの目標として、6つの教育改革を掲げています。1つ目の「IT教育による、創造力の育成」は、ITキャンプなどで取り組んできました。中高生によるスマートフォンアプリのコンテスト「アプリ甲子園」、IT業界にもプロ野球のようなヒーローをつくりたいと「ITドラフト会議」を誕生させました。プログラミングを学ぶ(インプット)だけでなく、アウトプットまで用意することで、モチベーションが上がります。

 2つ目は「アントレプレナーシップ教育による、実行力の育成」。これは起業家教育ですが、全員が起業家を目指すということでなく、さまざまな問題や課題に直面したとき、自分で解決できる力を付けてほしい、そのような能力を身に付けてほしいというものです。

 3つ目は「オンライン教育による、知のオープン化」。オンライン教育を推し進めることで経済的、物理的な不公平をなくしたいと思っています。

 4つ目は「先生の力を最大化するプラットフォーム」。先日、中学校・高校の情報化教諭専用の授業支援プログラム「TECH for TEACHERS」の提供を開始しましたが、教育現場のサポートもし続けていくつもりです。

 5つ目は「21世紀の学校」。ゆくゆくは学校運営もしたいと考えています。

 そして、最後に「グローバルに学び合う土壌」。昨年、シンガポールでのITキャンプを開催するなど、グローバルなIT教育も展開していきます。着手しはじめているものもありますが、2025年までにこの6つを達成したいと考えています。

--ありがとうございました。

 次から次へとアイデアがあふれ出す水野氏。エネルギッシュな水野氏の語りを聞いていると、ITキャンプのさらなる浸透をはじめ、新たなサービス開始や協業の拡大、ライフイズテックによって世界がどう変わるのか、おおいに期待が高まる。

《聞き手:田村麻里子》

《大倉恭弘》
page top