【レクサス GS F 試乗】重厚でいながら、速さと軽快感を出せるクルマ…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【レクサス GS F 試乗】重厚でいながら、速さと軽快感を出せるクルマ…中村孝仁

477ps、530Nmの5リットルV8NAエンジンを搭載したモデルである。公道試乗も試みた。

自動車 試乗記
レクサス GS F
  • レクサス GS F
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  • 写真では大したことがないように見えるが、カメラを持つ手が揺れるほどの風と雨だった。
  • ちょっと走るとすぐに、落ち葉などがボディに付着する
  • レクサス GS F 試乗

477ps、530Nmの5リットルV8NAエンジンを搭載したモデルである。公道試乗も試みた。

ドイツ製の高性能モデルはこれ以上のパフォーマンスを出しているのがほとんどだが、NAモデルは存在しない。

ヨーロッパは一様にダウンサイジングターボが大流行りだが、そこに敢えて大排気量NAで挑むのがレクサス。果たしてパフォーマンス的な物足りなさは残るのか? という疑問も浮かぶ。しかし、スピード無制限の場所が今も存在するドイツならともかくとして、どこの国でもスピード制限は存在し、実際に試せるスピード域など限られたものだとしたら、このパフォーマンスは十分以上。特に低速でトロトロやってもしっくりくるNAは、感触としては気持ちイイ~部類である。

サーキットでは試さない、エコモードをまず試してみた。やはりパフォーマンスはだいぶ絞られた印象があって、バンと踏み込んだ時も加速は緩慢になるから、余程ゆっくり走る時かあるいは高速道路を定常走行する時に使うモードだ。

スタンダードは、とろとろドライブからバンと踏み込んだ時まで、とりあえず納得レベルの加速感を示すので、通常走行には向いている。スポーツSおよびスポーツS+モードはサーキットレベルの走りを堪能でき、アクセルレスポンスも良くなる代わりに、ギアは高回転域まで引っ張ってしまうからなかなかシフトアップしてくれないので、余程とばしたい時以外は、一般道では使いづらいかもしれない。あるいはマニュアルシフトをするモードだろう。言ってみれば峠道向きだ。ただ、どのモードを選んでも、ステアリング特性は変わらない。すべてのモードでクイックレーンチェンジを行ってみたが、クイックさは変わらなかった。

サーキット走行時にはほとんどわからなかった(雨の影響?)TVDは、意地悪なドライビングをすると顕著にわかる。広い駐車場(富士スピードウェイ内)で、一速に入れステアリングを切ったままフルスロットルにしてみた。通常なら確実にカウンターステアが要りそうだが、そんなものは要らない。見事にディファレンシャルの方で吸収してスムーズに走り出してくれるのである。後輪のトルク伝達を示すオレンジ色のバーグラフがメーター内にあるが、たいていの場合、そのバーの高さは左右同じだが、こういう極端なことをするとちゃんと必要な側にトルクを伝え、そちらのバーが高くなるのでそれと分かる。これはかなり有効だ。しかもこのトルクベクトリングは、良くあるブレーキを摘まむだけのなんちゃってトルクベクタリングとは違い、ちゃんと増速してくれるから、ホンモノだ。

試乗時間が短かったので、断定的なことは言えないが、サーキットでもこの一般道でもシートのしっくり感とホールド性の良さは抜群。まさに包み込まれるような心地良さを味わうことが出来た。恐らく長距離ドライブをしても疲労感が違うものと思われる。

また、アクティブサウンドコントロール(ASC)は、サーキットではその効果がほとんどわからなかったが、結構面白いことをやっている。これを担当した性能実験部、振動騒音開発主幹の林毅さんによれば、停車中に1500rpm程度でエンジンを回し、そこから全開にすると吸気音のようなサウンドが聞こえるというので試してみると、確かにシュワッと一瞬音がするように思える。ちなみにこのASC、スポーツS以上のモードでエフェクトが行われており、スポーツSではリアのみ、スポーツS+では前後のエフェクトがかかる。ただし、その違いは良く分からなかった。確かにスポーツS以上で全開にすると、高音域の伸びが良くなっていて、澄んだサウンドが聞ける。

足回りは、サーキットを想定したチューニングにしては一般道でも快適さを保っていることに驚かされる。まさにしなやかという表現が適切だ。因みに足の締まり具合を変える可変ダンパーの類は装備されていない。それにしては一般道での乗り心地は大いによろしく評価できる。AMGやMと比べるとだいぶ安い価格設定だから、これはこれで有りだと思う。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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