【トヨタ プリウス プロトタイプ 試乗】ボディ剛性高く、ドアの締まり音までよくなった…片岡英明 | Push on! Mycar-life

【トヨタ プリウス プロトタイプ 試乗】ボディ剛性高く、ドアの締まり音までよくなった…片岡英明

間もなく、新しい『プリウス』が正式発売を開始する。4代目プリウスは、フロントマスクなどに先代の面影が残っているが、フォルムは大胆に変わった。

自動車 試乗記
トヨタ プリウス プロトタイプ
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間もなく、新しい『プリウス』が正式発売を開始する。4代目プリウスは、フロントマスクなどに先代の面影が残っているが、フォルムは大胆に変わった。今までにない低重心パッケージを採用し、『MIRAI(ミライ)』のようにエモーショナルで、躍動感あふれるデザインとなっている。

実際に座ったときの印象も大きく変わった。先代と比べると、ヒップポイントが59mm低くなっているからだ。特徴的だった楕円形のステアリングも一般的な真円形に変わった。だが、チルト&テレスコピック機構を備えたステアリングと細かく調整できるシートによって最適なドライビングポジションを取ることができる。乗る前は、視界が悪くなっているのでは、と思っていたが、実際に運転してみると視界は良好だ。ノーズなどを下げているため、前方とピラーまわりの視界がよくなっていた。

ハイブリッドシステムは、今までと同じだ。1.8リットルの2ZR-FXE型アトキンソンサイクルエンジンに、モーターを組み合わせたTHSIIを採用している。エンジンは、吸気ポートやピストンなどの形状変更によって燃焼室内の気流を最適化し、大量のEGRガスを導入することで燃焼効率を高めた。きめ細かい改良により、最大熱効率はクラストップレベルの40%だ。また、モーターやトランスアクスル、パワーコントロールユニットなども小型・軽量化を図っている。駆動用バッテリーはニッケル水素電池に加え、リチウムイオン電池を設定した。ニッケル水素電池を含め、どちらも新設計だ。

着座位置が低くなっていることもあり、今までよりスポーティな雰囲気が強くなった。先代よりフィット性がよくなったと感じるのがシートだ。シート内のパネ特性の最適化を図り、クッションパッドの厚みや素材も工夫したと聞かされたが、走らせてみるとホールド感がまったく違っている。リアシートを含め、座り心地やドアの締まり音もよくなっていた。

ショートサーキットと構内の取り付け道路で最終プロトタイプを走らせる機会に恵まれたが、このときに先代プリウスも持ち込み、比較を行っている。予想した通り、ほとんどの項目で先代を圧倒し、大きく進化していることが分かった。走り出して最初に気がつくのは、静粛性が向上していることだ。遮音材を奢っているだけでなく、モーターなどのメカニカルノイズを低く抑え、EV走行の領域も広げている。空力性能も向上しているので、静粛性は1ランク、1クラス上の印象だ。冷却ファンの作動音が気になるほど静粛性は高かった。

ノーマルモードでの加速性能は、車重が重くなっているので、先代と大差ない印象だ。が、応答レスポンスは鋭くなり、滑らかさにも磨きがかけられるなど、洗練度を高めている。EV走行からエンジン走行に移るときも自然で、違和感がない。エンジンの始動は驚くほど滑らかだ。走行状態によっては気がつかないこともある。パワーモードを選ぶと高回転型の特性となるが、思ったほど刺激は強くない。

劇的な進化を遂げていたのが、走りの性能だ。ボディ剛性は驚くほど高くなり、ドアの締まり音までよくなった。また、サスペンション形式も変わっている。フロントはストラットを受け継いでいるが、リアは新設計のダブルウイッシュボーンだ。まず3代目プリウスのステアリングを握ったが、サーキットではコントロールするのに四苦八苦した。ウエット路面だったこともあり、狙ったラインに乗せるのが難しい。コーナー入り口では操舵レスポンスが鈍く、頑固なアンダーステアに悩まれる。ブレーキもクセがあり、速いペースで走るとコントロールするのに苦労した。制動時にクルマが暴れ、腰砕けになるから横滑り防止装置の介入も早い。

新型プリウスは、同じ15インチタイヤを履くモデルでもコントローラブルだ。最初のコーナーから狙ったラインに無理なく乗せることができる。ステアリングギアがクイックになっているし、ロールも抑えられているので、連続するコーナーを苦にしない。リニアな操舵フィールで、リアの追従性もいいから理想的なラインにたやすく乗せることが可能だ。

215/55R17サイズにインチアップしたプリウスは、サスペンションも専用にチューニングしている。ボディがしっかりしているし、足の動きもいいことに加え、グリップ限界も高い。だから同じスピードで走ると余裕が違う。限界域でコントロールできる領域も広いから安心してコーナーを攻めることができた。リチウムイオン電池、ニッケル水素電池ともにハンドリングに大きな違いは見いだせない。ウイークポイントに挙げられていた乗り心地もよくなっている。段差や突起の乗り越えでも乗り心地は穏やかだ。また、充実した先進安全装備も特筆できる。ミリ波レーダーと単眼カメラを使った歩行者検知機能付き衝突回避支援型プリクラッシュセーフティも信頼性は高そうだ。4代目プリウスは、かなり魅力的なクルマに仕上がっていた。気になる燃費は計測できなかったので、量産車の試乗のときにチェックしたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

《片岡英明》

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