【ルノー ルーテシアRS トロフィー 試乗】商売っ気抜きで作った超痛快ホットハッチ…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【ルノー ルーテシアRS トロフィー 試乗】商売っ気抜きで作った超痛快ホットハッチ…中村孝仁

自動車 試乗記

ルノー ルーテシアRS トロフィー
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F1の方ではやれエンジンを供給するのしないの、チームを買収して再びF1に参戦するのしないの、いろいろ揉めているが、このメーカーはホットハッチを作らせたら、右に出る者がいないと思えるほど上手である。今回のモデルは「マジ」だ。

勿論今までも「マジ面白れぇ」…というモデルが多かったが、今回は極め付け。しかも329万5000円はどう考えても商売っ気ないなぁ…と思えるバーゲンプライスである。とにかくやれることはすべてやった。それが『ルーテシアRS トロフィー』に込められたエンジニアの思いのような気がする。

勿論、例えば電子制御サスペンションを入れればもっと良いのかもしれないが、そこまでの予算は無し。予算の範囲で最高を求めたともいえるのだが、そのサスペンションにしても、ハイドローリック・コンプレッション・コントロールと言う、いわばダンパーインダンパーのような形状を持たせ、ストロークエンドをバンプラバーだけに頼るのではなく、さらにもう一段のオイルダンパーが働くような形状としている。これ、ラリー車からのフィードバックで、超高速域で効果を発揮するものだそうだ。

わかり易いポイントで言えば、エンジンは従来の「RS シャシースポール」と比較して、パワーで20ps、トルクで20Nm高められている。実際に表示される差異は実はこれだけ。例えばステアリングギア比が14.5:1~13.2:1に低められていると言っても、それは乗らなければわからない。また、車高はフロントで20mm、リアで1mm低められているのだが、表示上のスペックとしては従来の『ルーテシアスポール』と同じだから、これもわからない。トランスミッションのシフトスピードがやはり早められていると言っても、これも乗らなければわからないことで、要するにスペック上の大きな違いはないのである。

もう一つ見える違いとしては、ミシュランのスーパースポーツタイヤを装着していること。こいつの高性能ぶりは、ほんの少し前に乗った、某北欧製の高性能車に装着されていて、その食いつきの良さを味わったばかりである。勿論、外観はちゃんと至る所に入るトロフィーの文字と専用ホイールで区別されるから、見る人が見ればわかる。

で、このクルマがどのくらい素晴らしい性能を持ち合わせているかは、試乗して明らかになった。RSのサイドをグッと抉られた、それでいながら快適なシートに身を委ね、おもむろにスターターボタンを押す。言っちゃ悪いが、キーは相変わらず分厚いカードのようで、少々無様である。心地よい4気筒サウンドを奏でるエクゾーストを聞きながら、シフトレバーをDへ。まずはATモードで走らせてみた。RSドライブは走行モードをノーマル、スポーツ、レースへと切り替えることが出来る。レースはすべての電子デバイスが遮断され、それは横滑り防止にまで及ぶので、サーキット以外は使いづらい。というわけで今回はノーマルとスポーツのみを試した。

かなり締め上げられているはずのサスペンションだが、十分に快適と言える範囲に収まっていて、実用上の我慢を強いられるレベルの乗り心地ではない。でもって、それだけ確認すれば普通の走行は良し。本気モードでクルマを走らせてみるため、マニュアルシフト、スポーツモードへ移行した。その結果わかったことは、恐ろしいほどにフロントの食いつきがよく、コーナー途中からグイグイと踏んで行ってもフロントが逃げない。路面のアンジュレーションで暴れるクルマを高いボディ剛性とロール剛性で見事にいなしてくれる。ホワイトボディ自体は、一番安い『ルーレシア・ゼン』から、カップ用のレーシングカーに至るまで全く同じで、レーシングカーは安全のためのロールケージこそ入れられているが、ボディ自体は同じだという。俄かには信じ難いほどロール剛性は高い。

パドルシフトはスポーツモードで従来の170m・secから150m・secへと短縮されている。加速で目いっぱい引っ張ってギアを繋ぐと、リアからヴォム、ヴォムという音を立てながら瞬速でシフトアップされていく。痛快極まりない。

もう一つマルチダウンシフトというやつも有難い装備。これは、高速から、タイトコーナーなどに進入する際に、いちいち一速づつダウンシフトする必要はなく、マイナスのパドルシフトを引き続けていると、クルマの方が勝手に最適なギアをセレクトしてくれる、まるでマジックのようなシステム。何度か試してみたが、立ち上がりでは必ず鋭いダッシュ感が味わえた。

レブリミットは6800rpm。通常、多くのモデルがこの手前でサチュレートして、回転を上げてもクルマが加速していかない状態となるので、それより手前でシフトアップした方が速いケースが大半。ところがこいつは目いっぱいがちょうどよい。前述したマルチダウンシフトでも、クルマ任せにして選ばれるギアは、加速を始める際はほとんどのケースで6000rpm以上であった。つまり、5500~6800rpmは、このクルマにとってのスィートスポット、というわけである。

折角なので、ついているローンチコントロールも試してみた。スポーツモードに入れ、ATの状態で左右のパドルを2秒引くと、ローンチモードスタンバイ。この状態でブレーキをしっかりと踏み、アクセルを全開にする。エンジンは2500rpm付近でサチュレートするから、その状態でブレーキを離すと、まさに背中を蹴飛ばされたようなスタートダッシュが始まる。

さすが!タイヤの鳴きもほとんどなく、路面のアンジュレーションに関わらず、クルマは完璧に直進してくれる。まあ、オンロードでご厄介になることはないが、面白いアイテムである。とまあ、走ることに悦びを感じるすべてのエンスジアストにとって、このクルマは最高のおもちゃであると言っても過言ではない。因みに、フランスでは限定モデルのこいつ、日本はカタログモデルだそうである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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