【BMW 7シリーズ 試乗】時代とともに変わる上質の意味、その最先端に乗る…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【BMW 7シリーズ 試乗】時代とともに変わる上質の意味、その最先端に乗る…中村孝仁

新しいBMW『7シリーズ』のキーワードはコンテンポラリー・ラグジュアリー。まあ要するに現代のラグジュアリーとでも言おうか。その意味は乗ってみると何となくわかる気がする。

自動車 試乗記
BMW 7シリーズ 新型(740i)
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新しいBMW『7シリーズ』のキーワードはコンテンポラリー・ラグジュアリー。まあ要するに現代のラグジュアリーとでも言おうか。その意味は乗ってみると何となくわかる気がする。

伝統的な上質感とは、例えばインパネにウッドを使っていたりとか、質の良い本革シートで室内を満たしているとか…そうした部分が上質と捉えられがちだったが、近年こうした上質感は、例えばコンパクトカーの分野でも使われているし、何より本物かフェイクなんか見分けのつかないレベルにまで樹脂の質感が上がってしまっているから、こうした伝統的上質感の価値自体が下がっている。BMWが提唱したコンテンポラリー・ラグジュアリーはそうした内容は当然のものとして、コンパクトカーでは追随できない明確に線引きされた乗り味とか、走る、曲がる、止まるという要素に使われている電子デバイスの質感にまで及んでいると思われた。

試乗したのは「740i」。今となっては乗用車ではBMWだけが、なお開発を続けている直列6気筒エンジンを搭載したモデルである。そのエンジンについては後述するとして、現代のクルマに求められる大きな要素として、たとえ高級車であろうと燃費を向上させるという大命題があるということである。それは燃料をケチるという意味ではなく、燃料を大量に使うことで不可避的に出てしまう、CO2排出量を抑えるという目的だ。そのためには、例えばハイブリッドという技術を使うことも含まれるが、何よりハイエンドラグジュアリーはボディが大きく、重量が重い。それを削ることで燃費削減に大きく寄与する。多くのメーカーがオールアルミボディの使用に踏み切っているのもそうした背景があるからだ。

ではBMWは何をしたか。彼らは電気自動車『i3』を作る時に、その骨格となるシャシーをカーボン製とし、わざわざカーボンを作る工場まで支配下に収めた。となれば彼らが向かう先がカーボンであることは必然。ボディ構造をカーボンコアの名のもとに、高い剛性を維持しつつ軽量化した結果、最大130kgの軽量化に成功している。カーボンの採用はルーフメンバーやウィンドフレームなど合計16カ所にも及ぶ。

一方、上質な走りに対処するために、ついに前後セルフレベリング機能付きのエアサスを導入。ここまでなら既に達成しているメーカーも多いが、BMWはさらにフロントウィンドウに設置したステレオカメラが路面の凹凸情報を検知して、継続的にサスペンションの調整を行うエグゼクティブ・ドライブ・プロを全モデルに標準装備している。オプションなら似たような装備があるメーカーもあるが、全グレード標準となるとBMWが初ではないだろうか。このほか、600m先まで照射可能なレーザーライトや、3Dカメラがドライバーの手の動きを認識して、ジェスチャーによる車載コントロールを可能にするジェスチャーコントロール、リモコンキーにディスプレイを装備して、車外からでもタッチパネルで諸操作を可能にしたディスプレイキーの採用等々、かなり未来志向の強い成り立ちを持たせ、果たしてそれが単なるギミックではなくて本当に有用かどうかわからない装備まで含め、とにかくなかなか面白い装備を満載しているのが新しい7シリーズである。

さて、前述した直列6気筒エンジン。3リットルツインパワーターボユニットは、今でも着実に進化を続けている。縦方向に長いがゆえに、衝突の際にエンジンが室内に飛び込む危険性が除去できないと、世界中のすべてのメーカーが直6の開発をやめてしまう中で、BMWだけが今も採用しているもの。さすが名の通り、バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ、即ちバイエルンのエンジン工場を社名とするだけあり、エンジン作りでは追従を許さないと言わんばかり。その静粛性、スムーズネス、吹け上がりの気持ちよさ、パフォーマンス、どれをとっても文句のつけようがない。とりわけスムーズネスという点ではV8よりも優れている。その端的な例は、スポーツモードをチョイスするとアイドリングストップが行われなくなるにもかかわらず、車両が停車した時にまるで無音、そして全くの無振動空間に車両が包まれた時は、驚愕せざるを得なかった。後にエコプロモードでアイドリングストップした時は、やはりエンジンがかかっていたのだと後で気づかされるほどの静粛性と無振動である。

もう一つのモード、コンフォートには今回新たにプラスというさらなるエクストラコンフォートを可能にする機能が追加されている。これをチョイスすると、そのスムーズな乗り心地は一昔前のアメ車並みのハーシュネスの少なさを体感できる。しかもこちらも上下方向に入力される振動がほとんどなく、ゆったりと船に乗ったような感覚の乗り心地を堪能できる。

上質をキーワードにすると、例えば今やACCやアイドリングストップなどの電子デバイスは、付いていて当たり前の時代。ではそれをどうコントロールして、スムーズに走らせるかがその質感の分かれ目となるが、やはり7シリーズのアイドリングストップは止まる方もかかる方も、ドライバーにすらそれを意識させないほどスムーズで違和感がない。

とまあ、実に面白い装備が満載されているのだが、例えばレーザーライトやウェルカムカーペットと呼ばれる、夜間の乗車を助けるドア下のライトなどは夜間でないと体験不可。ディスプレイキーも肝心なリモートパーキングコントロールはまだ使えないとあって、これも体験不可。短時間の試乗では7シリーズの断片しかわからないほど、ニューモデルの奥は深い。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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