【高校受験2016】東京都立トップ校は記述力と読解力がカギ…SAPIX中学部 | Push on! Mycar-life

【高校受験2016】東京都立トップ校は記述力と読解力がカギ…SAPIX中学部

 東京都では、近年公立高校の人気が高く、特に進学指導重点校に注目が集まっている。平成28(2016)年におけるこれらトップ高校の入試予想および、入試当日までのアドバイスなどを、SAPIX中学部 教育情報センター部長の高橋淳氏に聞いた。

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SAPIX中学部 教育情報センター部長、高橋淳氏
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 今年も残すところあと2か月。いよいよ受験シーズンが近づいてきた。東京都では、近年公立高校の人気が高く、特に日比谷高校をはじめとした進学指導重点校に注目が集まっている。東京都の進学指導重点校(以下、重点校)は、日比谷、西、戸山、青山、国立、八王子東、立川の7校。重点校には、過去3年間の生徒の学力伸長度として、センター試験の成績や難関国立大学への合格者数といった細かい基準が定められている。

 平成28(2016)年におけるこれらトップ高校の入試予想および、入試当日までのアドバイスなどを、SAPIX(サピックス)中学部 教育情報センター部長の高橋淳氏に聞いた。

特色を出したオリジナル問題を取り入れる学校が急増

--東京都の「進学指導重点校」の公立高校入試の特徴を教えてください。

 現在、東京都の重点校は、2014年から始まった「グループ作成問題」が大きな特徴です。グループ作成問題は、重点校などがグループとなり、共同で英・数・国の入試問題を作成しており、「記述」に重点をおき、数学でも解答だけでなく、その途中経過である解法を書かせる傾向になっています。どれだけきちんと理解しているかが大切。同時に、問題を解くための読解力も強く求められています。

 また、入試問題では、グループ作成問題以外に各教科大問の1問だけは、その学校独自の問題にさしかえてよいことになっています。初年度の2014年はグループ作成問題のみの高校がほとんどでしたが、2015年よりほとんどの学校が、大問1問をオリジナル問題に差し替えるようになりました。2016年も、多くの学校が独自のカラーを出すため、オリジナル問題の採用を検討しています。

 2015年の出題を見ると、数学で西や日比谷、戸山など、理数系にこだわりのある学校が、オリジナル問題を出題しています。一方、青山などのグローバル性を重視した学校では、英語のオリジナル問題が出ていますね。

都立高を目指すなら実技系科目もおろそかにしない

--2016年の高校入試で、大きな変更点はありますか。

 2016年入試から、本番の試験と調査書(内申)の比率が7:3に統一されました。といっても、重点校は今までもそうでしたので、特に変更はありません。

 また、調査書300点のうち、保健体育、音楽、美術、技術家庭科の実技系科目が、これまでの1.3倍換算から2倍に変更になりました。また、調査書によらない学力の点数のみで選抜していた「特別選考枠」が廃止されました。

 つまり実技系科目を1点上げるのと、本番の試験を7点ほど上げることがほぼ同じ扱いになります。これをどう捉えるかは人によりますね。実技の時間に積極的に授業に参加していない生徒には大きいでしょうが、実はシミュレーションしてみると、この7:3になったことで、合否が逆転する生徒はほとんどいないという声もあります。とはいえ、小さくはない点数なので、都立高校を目指すのであれば、きちんと実技科目もやっておくべきだと思います。

入学したいという熱意を答案にぶつける

--入試までのラストスパートに向け、アドバイスをお願いします。

 これまで高校入試に向けて勉強を重ね、努力をしてきた生徒でしたら、その努力を継続し続けることが大切です。努力を維持するためには、体調管理にも気を付けてください。

--入試当日のアドバイスもお願いします。

 努力してきた、勉強してきた量に自信をもつことです。

 そして、試験では「この高校に入学したい!」という熱意をもって取り組んでください。たとえわからない、解ききる時間がない問題があっても、最後まであきらめずにやり通すこと。答えまでたどり着かなくても、過程の記述に評価できる要素があれば点数をもらえる場合もあります。「ここまでわかった」ということをアピールする。そして「受かりたい」という気持ちを答案にぶつけてください。

--受験生の保護者が本番までにやるべきこと、できることはなんでしょう。

 生徒にもよりますが、SAPIX卒業生にアンケートを行ったところ、男子は「何も言わないで見守ってくれた」のがありがたいという意見が多かったですね。逆に、女子は「声掛けが心に響いた」「励まされた」という意見が目立ちました。

 今は入試方式も多様化していますので、情報取集をする、入試関連の書類をとりまとめるといった実務面でサポートを行うのもよいでしょう。暴飲暴食にならないように食事の管理や、睡眠時間の確保など、勉強しやすい環境をつくってあげるのも保護者の大切な役割です。

首都圏であれば複数校の受験が可能

--これまでのSAPIXの生徒さんで、印象に残ったエピソードはありますか。

 中1から通っていて、マンスリーテストでは良い成績をとれるのに、実力を試すサピックスオープンには弱いという生徒さんがいました。ところが、中1からコツコツまじめにやっていた成果が出て、最終的に女子の最難関である慶應義塾女子高等学校に合格したのが印象的でした。

 ほかには、都立国立高校に合格した生徒さんですね。1月末の国立(くにたち)の推薦に落ちてしまいかなり落ち込んでいたのですが、その後奮起して一般入試で合格しました。都立高校を目指す場合、3月頭の発表までの長丁場になります。その途中で私立や国立(こくりつ)に受かって受験が終わっていく生徒を多々目にして、不安と戦いながら過ごすわけです。推薦を落ちても立ち直り、見事合格をつかんだのは、とても立派でしたね。

--何校ぐらい受験するのでしょうか。

 SAPIXの生徒の場合、平均6~7校受験しています。帰国生はもっと枠が広がりますので、帰国枠もカウントすると10校以上受験する生徒もいます。これは、近県の学校にも通える首都圏のみの特徴です。

--公立のトップ校を目指す場合でも、同レベルの私立トップ校や、併願校も受けるため、受験数が増えるということでしょうか。

 2校のみの受験では、もし第一志望がだめだった場合、併願校に通うことになります。第一志望に近い良い学校が首都圏は多数あり、受験日も違いますので、選択肢を複数もつことが可能です。

--併願が多い分、辞退も多いのでしょうか。

 トップの公立高校を受験する生徒は、私立と併願していても、都立を第一志望にしていることが多いため、合格してからの辞退はそんなに多くはありません。ただし、事前に私立や国立に受かったため、入試を欠席するというケースは多いです。特に難関の都立ほど当日の欠席者が多い傾向にあります。

高校受験は自分を成長させる機会でもある

--高校受験に向けてどのような取組みをしているのでしょうか。

 高校受験のためだけではなく、入学後の未来に向けて学習をすることを勧めています。実際、SAPIX出身の生徒は、高校入学後も学力が伸びるケースが多いと言われます。それは、目先のテクニックだけに頼らず、本来の力を身につけられるような学習方法の賜物だと思っています。

 SAPIX中学部は、首都圏を中心に全国で25校舎と少ないながら、高い合格実績を出しています。グループ作成問題で重視されている記述力には従来から力を入れておりました。

 中1、中2では5科または3科で幅広く学習し、中3では「SS特訓」のほか、ゴールデンウィークに行う「GS特訓」で志望校対策の授業も実施します。

 高校受験は長丁場になりますので、生徒たちのケアも含めた受験指導を考えています。受験シーズンに入ったら、生徒には「入試結果が出たら、必ずSAPIXに寄りなさい」と声掛けしています。特に、不合格だった場合にこそ寄ってほしいですね。

 卒業生の保護者の方からは、高校受験の成果として「主体性が増した」「自己管理ができるようになった」といった声も聞かれます。高校受験は、自分の将来の進路を決める第一歩であるとともに、受験を通して成長する大切な機会ともいえるでしょう。

--ありがとうございました。

2016年東京都公立高校入試スケジュール
<一次および分割前期>
 願書受付:2016年2月4日~5日
 志願変更:2016年2月15日~16日
 学力検査:2016年2月24日
 合格発表:2016年3月2日
<分割後期>
 願書受付:2016年3月7日
 志願変更:2016年3月8日~9日
 学力検査:2016年3月10日
 合格発表:2016年3月16日

《相川いずみ》
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