スキル×チームワーク、全国初公立小の「マイクラ授業」に児童が夢中 | Push on! Mycar-life

スキル×チームワーク、全国初公立小の「マイクラ授業」に児童が夢中

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PCやサーバー環境はTENTOが用意し現場に構築する。ネット環境などなくても実施可能だ
  • PCやサーバー環境はTENTOが用意し現場に構築する。ネット環境などなくても実施可能だ
  • 授業風景
  • i和 design-Programming Festival開始前の朝礼
  • MinecraftEdu
  • TENTO 竹林暁代表。当日は先生を務めた
  • 授業する竹林先生
  • 授業のための「ワールド」に入った児童たち
  • これが「タートル」。色、表情、模様など設定できる
 10月31日、東京都内の小学校で「マインクラフト」を利用した授業が行われた。公立小学校で初めて授業にマインクラフトを導入したのは、多摩市立愛和小学校。この学校は、児童ひとりひとりにiPadを持たせた授業に取り組んでいることでも有名だ。

◆公立校では初となるマインクラフトによる授業

 この日は同校で「i和 design-Programming Festival」というイベントが開催されており、学年ごとに「Scracth(スクラッチ)」「Scracth Jr」「Viscuit(ビスケット)」「Tickle+BB-8」「MinecraftEdu(マインクラフトエデュ)」「LEGO Mindstorms EV3」といった学習用プログラミング環境、ツール、キットを使った公開授業が行われた。マインクラフトによる学習が行われたのは、5年生の授業。

 マインクラフトは、スウェーデンの企業Mojangが開発したオンラインゲームで、ユーザーのアバターを介して仮想空間を探検したり、開拓したり、建物を作ったりできる。自分や仲間とプレーした動画や中継動画を動画サイトで公開するのも人気のひとつとなっているようす。さらに、本格的なプログラミングの知識があれば「MOD」と呼ばれるモジュールを作り、ゲームを自分で拡張したり、ほかのユーザーに配布したりもできる。運営会社が用意したモジュールやシナリオにとらわれず、多様な遊び方ができるため世界中にファンが広がっており、登録ユーザーは1億人を超えるといわれている。

 授業は、プログラミングスクールTENTOが担当した。参加した児童は9名。担任の先生のもと、TENTO代表の竹林暁氏が講師を務め、サポートとしてTENTOスタッフが1名ついての授業となった。ノートPCにはWindows 7または8がインストールされていた。使用するソフトは「MinecraftEdu」(バージョンは1.7.1安定版)というマインクラフトを教育用に改良したもので、TeacherGamingという会社からライセンスされている。

 なお、MinecraftEduには、先生用の管理者アカウントが設定可能となっている。このアカウントから児童のアカウントの操作をフリーズさせたり、移動させたり、アイテムを変更したりができる。説明に集中させたいときは全員をフリーズさせたり、トラブルや操作ミスから復旧させることもできる。

 愛和小学校では無線LAN環境が整備されているが、TENTOによるマインクラフトの授業は、同社が持ち込んだ無線LANと小型サーバーによって、その場に作られた専用の環境で行われた。インターネットとクラウドを利用したものの場合、サーバーやネットワークの具合によって動作が不安定になりがちだが、その場に作られた専用の環境では既存環境との接続テストや学校ネットワークの制限を受けることがないため、安定した接続環境が期待できる。同時に、児童たちがインターネットの外の世界に直接触れることがなく、マインクラフトのアカウントも安心して作ることができる。

◆LOGO風言語の「タートル」機能でプログラミング学習

 授業の内容は、マインクラフトに自分のアカウントでログインするところから始まった。アカウントはこの授業の前に行われたプレ授業で作成済みであり、基本的な操作もそのときに学んでいる。

 今回の特別授業は、マインクラフトの遊び方を学ぶわけではない。マインクラフトを通じてアルゴリズムやプログラミングの基本を習おうというものだ。これには「タートル」というMODを利用する。LOGOという教育用プログラミング言語もタートルという出力機構を持っているが、それと同様のものと考えればよい。「前進」「後退」「向きを変える」「ブロックを置く」などの命令を与えるとタートルはそのとおりに動く。命令は「リモコン」によって逐次に与えることもできるが、GUIエディタ(Visual Editor)を使って命令アイコンを並べて指令(プログラム)どおりに動かすこともできる。

 タートルの動かし方になれたところで、児童たちに課題が与えられた。タートルにブロックを縦に積ませたり、横に並べたり、L型、表彰台を作らせるという課題だ。例えば、「縦に3つブロックを積む」という課題は、タートルに「ブロックを置く」「上に移動する」「ブロックを置く」「上に移動する」「ブロックを置く」という命令を順番に与えることになる。タートルの命令は基本的な動作しかないので、横に動く場合も、「タートルの向きを変える」「前進」といった手順が必要となる。この作業によって、イメージした動作をアルゴリズムに展開することを学習していく。

 課題を1通り作業させたところで休み時間となったが、児童たちはだれも休憩をとりたがらない。「もっと続けていいですか?」という質問がでるほど、タートルを動かすのに夢中になっていた。

◆授業をとおしてチームワークも磨かれる…スタンドアローン型アプリや教材との違い

 授業の後半は、さらに課題が難しくなる。3人ずつのグループを作り、それぞれのタートルにダンスを踊らせようというものだ。タートルに好きな動きをさせ、それを繰り返す。3つのタートルがいっしょに動くことでダンスをしているように見せるという課題だ。繰り返しはループ命令(ここではdoからwhileループを無限ループにして利用)のアイコンを使う。先生が見本を画面に表示させてループのさせ方を説明し、とりあえず見よう見まねで児童たちはループの使い方を覚えていた。

 この課題では「繰り返し」というアルゴリズムが加わることでプログラムの難易度が上がるわけだが、3つのタートルでひとつのダンスをさせるということで、単にロジックを学ぶとかプログラミングスキルを身に着けるといった以上のスキルが試されることになる。これは、コンピュータを使った学習だけの特徴ではないが、それぞれのタートルの動きをグループごとに考える必要があるため、チームワークや協調性、あるいはだれがリーダーシップを発揮できるか、など共同作業による課題克服の能力が問われる。

 そのため、ブロックを置く課題を簡単にこなせる児童がいるグループが必ずしもダンスを完成させる時間が短いとは限らないし、より複雑なダンスを作れるわけでもない。リーダーシップを発揮できる児童、ほかの人に教えたり聞いたりできる児童、お互いのダンスを見ながら全体を連携させることができるグループなど、微妙な差が現れる。

 このような協調作業・共同作業は、マインクラフトのようなオンラインマルチプレーヤー型のゲームの特徴を生かした授業といえるだろう。スタンドアローン型のアプリや教材では、各自のタブレットで作った課題を先生のタブレットやPCに集めて表示させたりすることはよくあるが、プログラミングや課題に取り組む段階で、児童全員または複数が同時にひとつの作業をできる環境は多くない。

 ダンスのプログラミングが1通り終わったところで、グループごとに作品発表となった。3人の動きをうまくシンクロさせたり、タートルのカラーリングでダンスを分けたり、どのグループもそれぞれのダンスを完成させ、授業は終了となった。

 なお、今回の授業はプログラミングを意識した特別授業だが、同校では、授業とは別にゲーム版のマインクラフトで自分たちの好きな街を作らせるという取組みも行っているという。
《中尾真二》

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