【フォード フォーカス 試乗】Cセグメントの巨人に隠れた陰の実力車…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【フォード フォーカス 試乗】Cセグメントの巨人に隠れた陰の実力車…中村孝仁

フォード『フォーカス』が大幅モデルチェンジを受けて生まれ変わった。モデルチェンジと言ってもマイナーチェンジなのだが、今回のそれはかなり大がかりなものである。

自動車 試乗記
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フォード『フォーカス』が大幅モデルチェンジを受けて生まれ変わった。モデルチェンジと言ってもマイナーチェンジなのだが、今回のそれはかなり大がかりなものである。

一番大きいのはその心臓。従来の2リットルNA4気筒から、1.5リットルのエコブースト、ターボ4気筒に変わった。併せてトランスミッションも従来のDCTから6速ステップATに切り替えられている。

このエンジンとトランスミッションのコンビに関して要素は二つ。一つはダウンサイジングされたエンジンの性能。そしてもう一つがDCTからステップATに変更したことによる走りの変化である。

実はこの二つ、まだほんのチョイ乗りでしかなかったので断定的な結論は避けたいが、180ps、240Nmという性能は先頃発売されたばかりのフォード『クーガトレンド』のそれと変わりない。パワーが微妙に異なっているが、まあ同じものだ。クーガに試乗した時は大人3人乗ってもグイグイと引っ張って走る力強さを見せていたから、より軽量なフォーカスに積めば、当然更なるパフォーマンスが期待できると思っていた。

しかし、今回試乗したフォーカスに関していえば、何故か低速トルクの薄さを感じてしまったのだ。机上の数値では1600rpmから最大トルク240Nmを発揮しているはずだから1420kgの車重には十分すぎる性能だと思うのだが、何故かそれを感じられなかった。だから、NAの2リットルが秀逸だったのかと改めて感じてしまうほどだったのである。

こうした印象は往々にしてその直前に乗ったクルマに左右されやすい。その直前に乗ったクルマは2.3リットルエコブーストユニットを搭載する『エクスプローラー』だったから、その印象を消せぬまま1.5リットルのフォーカスに乗ったせいだと思う。アンダーパワーという印象はこれっぽっちもないので安心して欲しい。

もう一つのDCTからステップATへの変更だが、最近はステップATの出来が非常に良くなって、敢えてDCTからステップATへ回帰するメーカーもある。ボルボなどがその典型だ。フォードの場合6ATは自前のもので、今回はパドルシフトも装備されて、DCTと変わらぬスポーツ性を維持しているのだが、フォードのステップATはボルボが搭載するアイシン製に比べるとダイレクト感に欠け、より快適性重視の方向のチューニングを持つから、少なくともスポーツ走行だけを抽出すれば、従来のDCTに軍配が上がる。

変更点はそれだけではない。上級グレードの「スポーツプラス エコブースト」のみの装備だが、アクティブパークアシストに始まり、アダプティブクルーズコントロールや、レーンキープアシストなどが装備され、従来からあった自動ブレーキシステムも50km/hからその効果を発揮するようにアップデートされた。これはベースモデルの「スポーツ エコブースト」にも装備される。

このセグメントには巨人に例えられる最量販車種、VW『ゴルフ』が存在し、このセグメントに属するほとんどのハッチバックモデルは、その陰に隠れた存在に追いやられているが、例えばプジョー『308』などにしてもその実力は一部でゴルフを上回っている。フォーカスの場合、特に評価したいのが室内空間の広さと卓越した運動性能及びハンドリングだ。

とりわけハンドリングは昔からフォーカスの美点で、ターンインで切れ込んでいくノーズのスムーズさは秀逸である。これはマイチェン前から装備されていたトルクベクタリング・コントロールのおかげもあるが、こうした装備をはじめから搭載し、走りを磨いてきた成果として表れているような気がするのである。

また、ついにインダッシュのナビゲーションを装備できるようになったことも大きな進化だろう。相変わらずsyncの音声認識は英語のみしか対応できないなど、一部ローカライゼーションの出来ていないところもあるが、装備も充実し、ほぼほぼ日本市場の要求に応えるモデルとして完成したように思える。そして走りの実力は以前からこのセグメントのトップランナーなのだから、まさしく陰の実力車はフォーカスだと言っても良いと思う。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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