DIATONE SOUND.NAVI「NR-MZ90PREMI」の新機能“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”その利得を徹底検証! #1: 前編 検証テーマ「何をしようとするものなのか」 | Push on! Mycar-life

DIATONE SOUND.NAVI「NR-MZ90PREMI」の新機能“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”その利得を徹底検証! #1: 前編 検証テーマ「何をしようとするものなのか」

取材協力/サウンドステーション クァンタム

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DIATONE SOUND.NAVI「NR-MZ90PREMI」の新機能“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”その利得を徹底検証!


取材協力/サウンドステーション クァンタム

2014年のカーオーディオ業界において、もっとも注目された製品の1つである『DIATONE SOUND.NAVI』。マイカーライフでもこれまで多角的にこの製品について分析し、ご紹介してきたが、今回は、話題の新機能、“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”のみを掘り下げる。この機能の凄さの神髄は何なのか、これまでの記事では解説しきれていなかった部分にまで踏み込んでいく。

取材にご協力してくれたのは、茨城県の名店・クァンタムの土屋さん。「NR-MZ90PREMI」が登場して以降、すでに相当数を取り付け、“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”についても十二分に検証してきたという土屋さんに、その検証から導き出された答えをお聞きしてきた。じっくりとお読みいただきたい。

まずはおさらいから入ろう。この“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”の概要を解説しておきたい。

これは、フロント2ウェイスピーカーの鳴らし方に関する機能である。簡単に言ってしまうと、2ウェイスピーカーを“マルチアンプシステム”で鳴らした上で、ミッドウーファー帯域に「マルチウェイタイムアライメント」をかける、という機能だ。

ところで“マルチウェイタイムアライメント”とは、ダイヤトーン独自のもの。これについても概要をおさらいしておく。

通常のタイムアライメントは、DSPでクロスオーバーをかけてから(帯域分割してから)、分けられた信号それぞれに対して調整を施すというものだ。それに対して「マルチウェイタイムアライメント」は、DSP内でタイムアライメントをかけるが、実際のクロスオーバーは、スピーカーの手前に設置されている“パッシブクロスオーバーネットワーク”で行う。信号は帯域分割されそれぞれにタイムアライメントをかけるのだが、サウンドナビから出力される時点では、あくまで信号は左右1chずつ。つまり、“マルチアンプシステム”を取らずして、タイムアライメントがかけられる、という画期的な機能である。

これを利用して2ウェイのミッドウーファー帯域を2分割し、それぞれにタイムアライメントをかける。それがこの、“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”だ。

つまり、「2ウェイを、“仮想3ウェイ”として扱う」ことができるようになるのである。


マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L


さて、まずは素朴な疑問から。この機能が必要な理由から教えていただいた。

「3ウェイと比べた時、2ウェイにはメリットとデメリットの両方があります。メリットは音がまとまりやすいこと。音の発生場所(音源)が少ないほうがまとまりが良いのです。また、スピーカーユニットが増えると整理整頓が難しくなりますが、2ウェイはその点シンプルですから、扱いやすい。

しかし、ミッドウーファーの担当帯域が広いことが、デメリットを生んでしまいます。

1つのユニットで、広い帯域をスムーズにフラットに再生するのは難しいんですよ。100Hzの音と、例えば800Hzの音とでは、波長の“長さ”が相当に違う。にも関わらず、それらを同時に同一の振動板で、乱れなく鳴らせと言っても、それは簡単なことではないんです。

さらには、ミッドウーファーとサブウーファー、ミッドウーファーとツイーター、それぞれの位相を両方とも完璧に合わせることも難しい。サブウーファーと合わせるとツイーターとの位相が狂い、ツイーターと合わせるとサブウーファーとのつながりが悪くなる…。帯域が広いがゆえに、揃えたいポイントがそれぞれで異なってしまうんですね。いろいろな手を使ってこれに対処はするのですが…。

音がまとまりやすいのは事実ですが、突き詰めていくとコントロールが難しい。これが2ウェイのメリットとデメリットです。

しかし、“仮想3ウェイ”を使えば、そのデメリットが是正できるんですよ」

では、どのようにして2ウェイのデメリットを是正していけるのだろう…。

「低域から高域まで均一にスムーズに鳴らすことが難しく、さらには、ツイーターとサブウーファーの両方としっかりつなげることも難しいので、結果2ウェイでは、中高域を優先させて調整することになります。中高域は波長が短いので、位相がずれると目立ちますし、ボーカルを気持ち良く聴きたい等々、中域が優先になるのはやむを得ないですよね。そうすることで、低域はあやふやになってしまう…。

つまり、2ウェイのデメリットは低域の乱れとなって現れがちなんです。

しかし“マルチ & パッシブ設定の3ウェイ/L”による“仮想3ウェイ”を使うと、低域だけを別扱いすることができるようになるんです。コントロールしきれなかった低域が、コントロール可能になるんですよ」


 タイムアライメント設定


ところで、通常の3ウェイと“仮想3ウェイ”の違いは何なのかもお聞きした。

「通常の3ウェイは、ミッドウーファーが苦手とする高域をスコーカーに担当させ、ミッドウーファーの負担軽減を図り、全体をスムーズに再生しようとするものです。つまり、多くの場合、ミッドウーファーの担当範囲から高域側の音を切り離し、それをスコーカーに担当させる、という形が取られます。

それに対し“仮想3ウェイ”では、ミッドウーファーの負担を軽減させることは不可能です。実際はあくまでも2ウェイですからね。

負担軽減が目的ではなく、負担が大きいことによりコントロールが難しくなってしまう部分を“コントロール下に置こうとする”ものなんです。コントロールしきれない低域側を切り離し、それを個別に扱おうとするものです」

とのことだ。名前は同じ3ウェイでも、実態は大きく異なっているのである。

「通常の3ウェイでは、ミッドウーファーとスコーカーとのクロスポイントは、800Hzから1kHzくらいに設定されることが多いのですが、“仮想3ウェイ”では、300Hzとか、低いところでクロスさせるのがセオリーとなります。まったく新しい概念なんですよ」

今週はここまでだ。

“仮想3ウェイ”が何を目指すもので、どのように運営されるものなのかご理解いただけただろうか。

次回はこの機能によって得られるメリットを、より深く、具体的に検証していく。お楽しみに。

《太田祥三》
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