サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #44: 第6章 『ハイレゾ』とは何か その魅力、可能性について考える Part.2 | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #44: 第6章 『ハイレゾ』とは何か その魅力、可能性について考える Part.2

#44:
第6章 『ハイレゾ』とは何か その魅力、可能性について考える Part.2

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サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』


#44:
第6章 『ハイレゾ』とは何か その魅力、可能性について考える Part.2


前回から開始した、松居さんによる『ハイレゾ』解説。今回はいきなり核心に迫り、『ハイレゾ』で音楽はどのように聴こえるのかを教えていただこうと思う。わかりやすく噛み砕いて説明していただいた。今週のキーワードは『サンプリングレート』。じっくりとおよみいただいたい。


ハイレゾについて前回の続きをお話する。今回は、ハイレゾで音楽を聴くと、どのような聴こえ方なのか、ということについて掘り下げてみたいと思う。

ハイレゾとはひと言で言えば、CDと比べ倍または4倍のサンプリングレートを持つ音源である。そのことから、スーパーウーファー & スーパートゥイーターが追加されたような世界になるのでは? と思っている人も少なくないようだが、実はそうではない。ハッキリクッキリではなく、むしろまったりして柔らかなタッチに聴こえるのだ。音源が少し遠くなったような印象にもなる。

そう、アナログに近づくのである。

ところで、CDが登場した当時の音楽メディアは、LP/SPレーコードとコンパクトカセット(Lカセットという物もあった)で、再生装置はアナログであった。

その環境の中でHi-Fiを妨げる要因として存在していたのは、時間軸変動(回転ムラ)や歪み(変調)。これに対してCDの再生は、これらの影響を受けにくい特徴を持っていた。このことはとても新鮮で、さらにはヒスノイズがないことに大いに驚かされたものだ。

こうして、アナログレコードはゼネラルオーディオで主役の座を明け渡すこととなった。しかし、CDが発売されてからも、アナログレコード再生の技術は、休むことなく進化を続けていて、(日本メーカーの殆どは開発をやめたが海外メカーはやめていなかった)ハイエンドの世界では主役の座を明け渡してはいない。

というか、その差はさらに広がっている。特に、2000年代に入ってからのアナログオーディオ(ターンテーブル)の進化は凄まじく、ファンタスティックな領域に至っている。電気回路の高速化とS/N比の拡大、振動の影響除去やオーディオケーブルの進化、さらには回転ムラの問題もデジタル技術を使うことで克服している。精密加工の進化で1980/90年代の製品とは比較にならないほど、Hi-Fiになっている。

ハイエンドの世界では、なぜ、CDよりアナログレコードのほうがHi-Fiなのかを説明しよう。

デジタル音源は、アメリカのベル研究所(トランジスタを発明した所)で考えられたPCM「パルス・コード・モジュレーション」が使われている。PCMとは、アナログ信号を標本化(サンプリング)・量子化し、得られた信号の大きさを二進の数値データとして記録する方式である。実はこの方式では音楽をすべて録音しているわけではない。サンプリングレートによって長さは異なるが、録音されていない瞬間が存在しているというイメージだ。CDのサンプリングレートは、44.1kHz。つまり、1/44000秒ごとに録音されているわけで、1/44000秒の次は2/44000秒の瞬間の音が録音される。本来の時間は連続しているのにPCM(CDフォーマット)では、1/44000秒ごと、その間の時間が寸断されている、のである。

ちなみに、CDのサンプリングレートが44.1kHzに決定された理由は、我々人間の聴力が正弦波では20000Hzまでしか聴き取れないことと、1枚のCDに、ベートーベンの第9交響曲が収録出来る容量が必要だったから、ということらしい。

そしてCDを再生するときも、1/44000秒ごとの時間の寸断が起きている。それに対してアナログレコードの再生においては、時間の寸断は起きないのである。これがハイエンドにおいてCDがアナログレコードに勝てない理由のひとつと言っていい。

ただ不思議なのは、デジタルのマスターを使ったアナログレコードでもその差は同じ、ということ。そもそも時間の寸断が起きている音源であるのに、再生時に時間の寸断が起きないことにより、その差が生まれるのだろうが、これはちょっと不思議な気がする。

デジタルの再生装置側にまだまだ進化の余地が残されている、ということなのか…。オーディオの世界には、まだまだ解明されていない何かが存在しているのだ。

さて、ハイレゾである。ハイレゾのようにサンプリングレートを上げるということは、寸断される時間がより短くなる、ということを意味する。これにより、ハイエンドのアナログレコード再生に近づくのである。なので、冒頭で説明したような聴こえ方になるのである。

次回は『量子化』の部分に着目して、さらにハイレゾでの音の聴こえ方について掘り下げてみようと思う。

《松居邦彦》

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